マイケル・B・ジョーダンが2人!?盟友ライアン・クーグラー監督との信頼のタッグで挑んだ『罪人たち』“一人二役”の秘密
「ブラックパンサー」シリーズのライアン・クーグラー監督がメガホンをとり、今年4月に北米公開されるや社会現象級の大ヒットを記録。はやくも来年のアカデミー賞の有力候補の一角との呼び声も高い『罪人たち』(公開中)で主演を務めたのは、クーグラー監督の盟友マイケル・B・ジョーダン。彼が本作で挑んだ“一人二役”による双子役の舞台裏へと迫っていこう。
『フルートベール駅で』(13)を皮切りに、『クリード チャンプを継ぐ男』(15)、「ブラックパンサー」シリーズと、クーグラー監督作品に欠かせない俳優として知られるジョーダン。「クーグ(クーグラー監督)とのコラボレーションがこんなにも満足感と喜びにあふれているのは、強い信頼関係で結ばれ、すべてが心地よいから。常に自分のコンフォートゾーンを超えて、必ずや楽しい経験になるという確信が持てるのです」と、彼はクーグラー監督へ厚い信頼を寄せていることを明かす。
また、「彼は信じられないほどの才能の持ち主。我々は仕事仲間でもあるし、まるで家族のような存在です」とも語るジョーダンは、本作の話をクーグラー監督から聞かされた時に「これはいままでとは違ったものになる」と直感したという。「ジャンルを超えたコンセプトがあり、特別な作品。私がこれまでのキャリアで演じてきたいかなる役のなかでも、最も冒険的で、少し緊張してしまいました」。
本作の舞台は1930年代のアメリカ、南部の田舎町。双子の兄弟であるスモークとスタックは、故郷であるこの町に戻り、黒人コミュニティのために、当時禁じられていた酒と音楽を提供するダンスホールの開業を計画する。そのオープン初日の夜、多くの客たちが熱狂するなか、ある“招かれざる者”たちが現れ、一瞬にして理不尽な絶望に飲み込まれていくことに。
ジョーダンが演じたのは、第一次世界大戦を生き延び、シカゴの暗黒街も渡り歩いてきたスモークとスタックの双子の兄弟。彼らを演じるうえでまず重視したのは、彼らの“バックストーリー”だ。「我々俳優にとって重要なもの。彼らの幼い頃の記憶から構築していきました」と語るジョーダン。さらに、長年にわたって彼の方言コーチを務めてきたベス・マグワイアの指導を仰ぎ、立ち方や歩き方、体の動きや姿勢など身体的な特徴からも双子の違いを見出していく。
「スモークは重厚な雰囲気がある寡黙な男。仕事一筋で、物質的なものに価値を求めず、外見も気にせない。対してスタックは軽やかで、痛みのなかでも笑顔を絶やさない。宝石や指輪、仕立ての良いスーツなど常にきちんとした服装をすることにこだわっているんだ」。こうした違いを演技に還元させるべく、ジョーダンは衣装デザイナーなど各部門のスタッフと話し合いを重ねたり、入念にリサーチを重ねていったという。
撮影に入るとジョーダンは、片方の役柄を演じた後、すぐにもう一方へと切り替えるという古典的な手法で双子役を演じ切った。「指示も設計図もありませんでしたが、時間をかけて自分なりのリズムを作り上げていったんです」。そんなジョーダンの奮闘に、クーグラー監督も「一緒に仕事をするたびに僕らの挑戦はより大きく野心的なものになっている。彼が双子の役をやり遂げるのを本当にワクワクしながら見ていました。スモークとスタックの微妙な違いを見つけだしていて、すばらしい演技です。“二人とも”ね」と絶賛。
これまで数多の映画作品で取り入れられてきた“双子役”の撮影手法を、昔ながらの方法と最新鋭の視覚効果技術を融合させて実現した本作。マイケル・B・ジョーダンが本当に二人いると思えてしまうほどのリアリティと説得力は、まさにジョーダンの役づくりの賜物。是非とも“二人”の演技に注目しながら、狂乱の一夜を目撃してほしい。
文/久保田 和馬