小栗旬&松坂桃李&池松壮亮&窪塚洋介が映画『フロントライン』で考えた、役者としての真実との向き合い方
「実在した人がいることの重みやその意味を考えた」(窪塚)
船内では100人以上が症状を訴えていた。国内に大規模なウイルス感染専門の機関がないなか、未知のウイルスに立ち向かったのは災害医療専門組織のDMATだった。時間、情報、感情など、戦う相手はウイルスだけではない。張り詰めた空気のなか、命の現場の最前線にいる面々が交わすのはほとんどが業務上の会話。個人的な会話が皆無に近い状態にもかかわらず、家族の物語や葛藤、愛を感じるシーンが多いのも本作の特長であり惹き込まれるポイントとなっているが、それぞれの役にはどのようなアプローチをしたのだろうか。「フィクションだけど、自分もその都度その都度そこで起きたことを体験していくようなイメージでやっていました」と話した小栗は、そもそもの物語、起きた現実がドラマティックであったため「自分たちでドラマティックにする必要がなかった」とも解説する。結城については「ともすれば情熱的に言わなければいけないようなセリフもあったりするけれど、あえて大袈裟に大切に言わないみたいな感じがありました」と話し、拡大した芝居を要求される現場ではなかったとも補足。
実在するモデルはいるが、本人の癖などは意識的に芝居に反映させるようなアプローチではなかったという松坂は「ご本人の思い切りのよさや型破りな感じがあるところは念頭に置いていました。一方で、役人を演じるにあたっては、国で決められたある種のセオリーもあったりするので、永田町文学、霞が関文学のようなことも駆使しながら問題に向き合っていくことも意識しました」と工夫に言及。
メインキャラクターのなかで唯一家族との物語が描かれる真田を演じた池松は「DMATの皆さん一人ひとりに大切な人や家族がいたこと、そのことが真田のエピソードを通して伝わるといいなという思いでした」と演じる際に意識していたポイントを振り返った。松坂と同じく、モデルとなった人物の喋り方を真似したり、キャラクターに寄せるというアプローチはしなかったという窪塚。「ただ、実在した人がいることの重みやその意味を考え、仙道=モデルの近藤先生として映画のなかで生きること。そのリアリティを大切にしたいと思っていました。モデルである近藤先生の存在はプレッシャーにもなったけれど、背中を押してもらっているような気持ちにもなれました」とモデルがいるキャラクターの演じ方や、その存在の重みについて語っていた。