映画『フロントライン』モデルとなった医師やクルーが語る真実の物語「医療従事者の思いも詰まっている」

映画『フロントライン』モデルとなった医師やクルーが語る真実の物語「医療従事者の思いも詰まっている」

2020年2月3日に横浜港に入港し、その後日本で初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」を舞台に、守るべきは国家か、人命かの選択を迫られた人々の姿を映し出す映画『フロントライン』(公開中)。

あの時、ダイヤモンド・プリンセス号内で、なにが起きていたのか?映画『フロントライン』は事実に基いて制作された“真実”の物語
あの時、ダイヤモンド・プリンセス号内で、なにが起きていたのか?映画『フロントライン』は事実に基いて制作された“真実”の物語[c]2025「フロントライン」製作委員会

未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、目の前の命を救うことを最優先に行動した人たち。全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために、誰一人として諦めることなく未曽有の事態の対応にあたった。時間との闘い、次から次へと起きる問題、立ちはだかる困難。「自分も感染するかもしれない」という危険な状況にさらされながらも、目の前の命を救うことを選び行動した人たちの物語が描かれる本作は、実際に起きたことを真実に基づいて制作されている。DMAT指揮官・結城英晴(小栗旬)、厚生労働省 医政局医事課の役人・立松信貴(松坂桃李)、DMAT隊員・真田春人(池松壮亮)、DMAT医師で実働部隊のトップ・仙道行義(窪塚洋介)、クルーズ船のフロントデスク・クルーの羽鳥寛子(森七菜)をはじめ、本作でキャストそれぞれが演じたキャラクターにはモデルとなる人物が存在している。

最前線“フロントライン”で立ち向かった人たちが映画化を受け入れた理由

【写真を見る】小栗旬演じる結城英晴のモデルとなったのは、当時神奈川県DMAT調整本部長の阿南英明
【写真を見る】小栗旬演じる結城英晴のモデルとなったのは、当時神奈川県DMAT調整本部長の阿南英明

あの時、ダイヤモンド・プリンセス号内で、なにが起きていたのか…。映画となって多くの人に“真実”の物語が届くことについて、結城英晴のモデルで神奈川県DMAT調整本部長(当時)の阿南英明は「映像のインパクトはすごいものだから、非常にありがたいと思いました」としみじみ。「当時は僕らもやっぱり苦しかった。でも、その苦しかったことをエンタテインメントという側面を持ちながら上手に表現していただいていることを心からうれしく思いました」と感謝の言葉を並べる。仙道行義のモデルでDMAT事務局次長の近藤久禎も「最前線で守っている人たちを守るためにもマスコミ対応もしっかりやらなければいけないという教訓にもなりました。でも本当の意味で守るためには世の中全体に対して訴えることが必要。それはなかなか実現するのは難しいから、映画という形で広められることを本当にありがたいと感じています」と笑顔を見せる。

医療従事者は耐える時間が4、5年続いていたと打ち明ける
医療従事者は耐える時間が4、5年続いていたと打ち明ける[c]2025「フロントライン」製作委員会

真田春人のモデル、浜松医科大学医学部附属病院 救急部 助教 高橋善明は「この4、5年、医療従事者は耐える時間が続いていました」と話し、コロナの話は表に出してはいけない感じがあったと指摘。「映画化と聞いた時は『私たちが表に出てしまっていいの?』というのが正直な気持ちでした」と隠さずに語る。映画化については、船内での活動の真実を伝える機会はずっとないままだったので、内心はやっと伝える場所ができるという思いと同時に、DMATは被災地に駆けつけ、「あくまでバックアップする存在」だと説明し、だからこそ映画で目立つところに出てしまっていいのか悩んだと告白。しかし、本作の企画・プロデューサー・脚本を務める増本淳の「コロナ禍でずっと頑張ってきた医療従事者にスポットライトを当てる意味でこの映画を撮りたい!」という思いに突き動かされ、協力することを決心したと経緯の詳細を丁寧に明かした。

立松信貴のモデルで厚生労働省 医政局 保健医療技術調整官(当時)堀岡伸彦は「官僚はあまりいい描き方をされないもの」と苦笑い。しかし、プロデューサーの増本の熱意に押され「ありのままを描いてくれるなら」という思いで快諾。厚労省をはじめ、当時の対応に対し批判の声があることもわかっているが「少なくともダイヤモンド・プリンセス号では誰にも後ろ指をさされるような行動はとっていない」とキッパリ。そういった自負も映画化を受け入れる要素となったと明かした。

羽鳥寛子(森七菜)のモデル 和田祥子 元ダイヤモンド・プリンセス号フロントデスク・クルー
羽鳥寛子(森七菜)のモデル 和田祥子 元ダイヤモンド・プリンセス号フロントデスク・クルー

羽鳥寛子のモデル、元ダイヤモンド・プリンセス号フロントデスク・クルーの和田祥子は「私があの場所で経験したことがそのまんま映画になっていてびっくりしました」と事実に基づいた物語であることを印象付ける。「改めて本当に映画みたいなことが起きていたと思ったのですが、本当に現実ではないみたいな感じでした」と振り返りながら、「いろいろな意見はあると思いますが、わからないなかで最善を尽くせたのかなと思えました」と映画で当時の出来事を再確認し、自分がやったことは“ベスト”であったと再認識することができたことにもよろこびを感じたとも語った。


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