スタジオジブリや次なる注目作『ChaO』まで!日本名作アニメの系譜を“アニメーション映画祭の権威・アヌシー”からひも解く
スタジオジブリで『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』(89)のラインプロデューサーを務めた田中栄子が中心となって設立し、『鉄コン筋クリート』(06)や『海獣の子供』(19)など、多くの話題作を生みだしてきたSTUDIO4℃の最新作『ChaO』(8月15日公開)。これまでも世界中から多彩な名作アニメーションが出品されてきたフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で長編コンペティション部門にノミネート、さらにカナダのファンタジア国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、すでにその確かなクオリティが話題になっている。
アヌシー国際アニメーション映画祭は、1960年にカンヌ国際映画祭からアニメーション部門が独立する形で設立され、アニメーション映画祭の中では世界で最も長い歴史を持つ。国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)、映画芸術科学アカデミー公認の映画祭でもあり、その規模は世界最大。2025年は約100か国から3900本以上の作品が寄せられたという。グローバルなアニメーションシーンを反映する重要な場所として、いまや別格的な存在だ。
今回のアヌシー国際アニメーション映画祭2025は現地時間6月8日から14日まで開催。本稿ではスタジオジブリ作品をはじめ、本映画祭で栄誉ある賞を受賞してきた日本の名作アニメーションを紹介しながら、まもなく世界にお披露目される『ChaO』の魅力を深堀りしていきたい。
『紅の豚』『平成狸合戦ぽんぽこ』…アヌシーを沸かせたスタジオジブリの名作たち
本映画祭の初期から作品を積極的にエントリーしてきた日本は、1963年に早くも久里洋二監督の『人間動物園』が短編部門審査員特別賞を受賞。以来、様々な部門での受賞が続き、アヌシーの中での日本アニメーションの存在を強く印象づけている。
昨年の第77回カンヌ国際映画祭で、長年の映画界への貢献を称える“名誉パルムドール”を、個人ではなく団体として初めて授与されたスタジオジブリとのつながりも深い。アヌシー国際アニメーション映画祭では、これまでに宮崎駿監督の『紅の豚』(92)、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』(94)が、それぞれ長編部門の最高賞にあたるクリスタル賞(グランプリ)を受賞している。
『紅の豚』は1920年代末のイタリア・アドリア海を舞台に、かつて空軍のエースだった中年の豚・ポルコが大空を縦横無尽に飛翔する痛快活劇、『平成狸合戦ぽんぽこ』はニュータウンの開発が進む多摩丘陵を舞台に、住処を奪われたタヌキたちが先祖伝来の“化け学”を駆使して人間に対抗するメッセージ性の高い群像劇。ジャンルは違えど、スタジオジブリの二大監督が、90年代前半に豚とタヌキという動物的なキャラクターをモチーフに制作した奇想天外な作品が同映画祭で相次いで評価された。
また、2014年の映画祭では高畑勲監督がゲストに招かれ、長年の功績を称える名誉クリスタル賞を受賞。高畑監督の『かぐや姫の物語』(13)がオープニングで上映されたほか、スタジオジブリの日常を描いたドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』(13)が上映された際にも注目を集めた。そして2018年の映画祭では、同年4月に他界した高畑監督の追悼があり、スペシャルプログラムのアヌシー・クラシックス部門には、映画公開から30周年を記念して宮崎駿監督の『となりのトトロ』(88)が登場。アヌシー国際アニメーション映画祭を通して、スタジオジブリが創り続けてきた物語が長年にわたり、国境を越えて人々に愛され、大きな影響を与えてきたことがうかがえる。