おわかりいただけただろうか…中村義洋監督と「オウマガトキFILM」ヒロが語り合う『ほん呪』『残穢』から『見える子ちゃん』まで
――ヒロさんが動画制作のうえで、“怖さ”のために心掛けていることはなんでしょう。
ヒロ「心霊スポットや事故物件などの撮影場所は、視聴者の方から届く情報なども参考にしながら、気持ちの悪い曰くがあったりという場所を選ぶようにしていますね」
中村「僕とヒロさんはたぶん怖いと思うものが近くて、理由が分からないものに惹かれるんですよね。ヒロさんたちの動画に、南向きの家なのに中に入ったら薄暗い…っていうのがあったじゃない?」
ヒロ「あります、あります」
中村「そこに『なんで?なんで?』とか『なんでこんなに暗いの?まだこんな時間なのに』って発言が挟まれていく。あれが怖いんです。僕、たまたま最近物件を探してたら、そういう家があったんですよ。一軒家のある一角だけ闇になっているものが。そういう、理由がつかないものがやっぱり一番怖いですよね」
「自分自身が“見えない”からこそ、怖さを伝えられるような気がします」(ヒロ)
――お二人は実際には“見えない”とお聞きしていますが、見えないからこそ撮れる恐怖、というのもありますか。
中村「あると思います」
ヒロ「『見える子ちゃん』に一緒に出演した心霊系YouTuberの松嶋初音さんやシークエンスはやもとさんのように、“見える”方って全然怖そうじゃないじゃないですか。見えないから怖いし、怖さを表現できるような気がします」
中村「『ほん呪』をやるまでは心霊動画を観るのが本当に嫌だったから、自分がどんなものを観た時に怖いと思うのか?っていうのはすごくベースになっていますね」
――中村監督とホラーの関わりについてお聞きします。商業映画監督デビュー前、中田秀夫監督の『仄暗(ほのぐら)い水の底から』(02)で脚本を担当された経験はどのようなものでしたか。
中村「鈴木光司さんの原作は短編だったんですけど、主人公の淑美が離婚調停中という小説にはない設定を思いついた時に『できた!』と思ったんです。調停が進んでいて、しくじったら娘の親権を取られてしまうという状況を作り、オチに繋がるヤングケアラー的な裏設定を盛り込んだことで、物語全体の見え方が全然変わったと思います。あの作品の“会いたいと思ったから、初めて霊が見えた”というコンセプトは、悩みを抱えた時から“見える”ようになった『見える子ちゃん』での、みこの状況に近いかもしれません」
――『仄暗い水の底から』では、『リング』(98)、『リング2』(99)、『リング0 バースデイ』(00)と、立て続けに鈴木光司さん原作映画で脚本を書かれていた高橋洋さんからバトンを受け継がれたような形でしたが、プレッシャーはあったのでしょうか。
中村「ありました、ありました。でも、うれしさの方が勝っていたかもしれません。高橋さんが書くものが本当に好きだったし、尊敬していたので光栄でしたね。『見える子ちゃん』でも高橋さんの影響を受けたシーンがあって、バス車内で一体だけ後ろを見ている霊は高橋さんがエッセイに書かれていた設定を取り入れています。それに、高橋さんが体験した“ある心霊現象”はこの手の作品をやる際はいつも参考にしていて。京都の旅館に泊まって書き物をしてきた時の話だそうですが、いつの間にか目の前に着物姿の女性が座っていて、ハッと思って顔を上げたら、視線が全然合わなかったという…。それがめちゃくちゃ怖かったと仰っていました」
ヒロ「中村監督はお話されていたような、嫌なシチュエーションを作るのが非常にお上手ですよね。今回も、幼少期の遠野先生が虐げられる嫌な回想シーンがありましたね。そのシーンが展開に活きていて、クライマックスでの霊の最期も壮絶でした」
中村「実は、クライマックスで霊が発する声は現場で変えたんです。悪霊だから最初は怒っている感じの声でやっていたんだけど、『もしかして?』と思って、生前の優しい声に変えてみたら腑に落ちるものになったんです」
ヒロ「ちぐはぐな感じが気持ち悪いんですよね…」
中村「そうそう。感情がおかしなことになっちゃっているというのが一番怖い。消え方に関しても、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でサノスの指パッチンによって人々が塵のように美しく消えていくシーンがあったじゃないですか。CG部は当初あれよりもさらに綺麗に消えていく霊を作ってたんですよ。だから『汚いままでいいから』と言って直してもらって、絶対に断ち切らなければいけないと思える、邪悪なものの末路に相応しいものにしました」
――細かいですね。
中村「あの霊は絶対に改心も反省もしないと思ったので、邪悪な状態のまま消える形にはこだわりました」
https://www.youtube.com/@noroinovideo_official
