「丸山くんは決して演技で嘘がつけない人」『金子差入店』で丸山隆平が見せた俳優としての進化を、演出家・映画監督の三浦大輔が語る
「過ちを犯したその先も、人生は続いていく」
「相手の演技を受けて輝くところ」が丸山の俳優としての特質だと語る。「この『金子差入店』はそんな丸山くんのよさを最大限に引き出す設定になっている」と三浦は解説する。なぜなら、この物語は金子が相関図の中心に立ち、そこに金子の家族や、依頼主となる加害者の母親、さらには差し入れを渡す面会相手など、様々な人物が配置され、矢印が引かれていく。
「丸山くんは芝居に対して、すごく真摯。決して演技で嘘がつけない人です。相手の役者さんとの感情の交換のなかで生まれるものを信じてお芝居をする丸山くんだからこそ、これだけいろんなタイプの人たちとそれぞれ深く関わることで、多彩なリアクションが引きだされたし、見せる感情の幅も広がったと思う」。
その究極と言えるのが、北村匠海が演じる殺人容疑で拘置中の男・小島高史と対峙する場面だ。「また北村さんがいい塩梅で演じてるんですよね。ちゃんと丸山くんの演技を引きだすような芝居をしていた。あまり上手くない役者がやると台無しになるような難しいシーンにもかかわらず、ここで自分はどういう役割を果たせばいいかを理解して、それを的確に実行している北村さんの高い力量にも驚かされました」と舌を巻く。
主演の力だけで映画はつくれない。実力を備えた助演陣の熱演が、本作を涙あふれるヒューマンドラマへと昇華した。「岸谷(五朗)さんも形だけのヤクザではなく、役に通った軸をしっかりと通して演じていらっしゃいましたし、金子の叔父を演じる寺尾(聰)さんはもういるだけで存在感が漂う」と称賛の言葉が止まらない。「個人的には、小島の母を演じる根岸(季衣)さんのお芝居が好きでしたね。金子のもとに電話がかかってきて、ふっと見たらすぐそこに根岸さんが立っている。あの不気味さと言ったら…。最初に金子差入店を訪れた時の悲壮感も含め、すさまじい表現力でした」。ハイレベルな演技合戦がさらけ出す、人間の脆さと優しさ。たとえつまずいても人はまた立ち上がれるのか。その答えは、映画館で示される。
「間違いなくいまこの時代を生きるすべての人に刺さる映画」
「情というものが薄まりつつある現代で、これだけ人情味あふれるヒューマンドラマが誕生したことに価値があると思います」と実感を込める。「僕がこの映画を観て思ったのは、過ちを犯したあともその人の人生は続いていくということ。説教くさい言い方になりますが、過ちを犯した瞬間だけを切り取って断罪するのではなく、もちろん事の大小はありますが、どんな人にもその先の人生があるのだということをどうか少しでも想像してほしい。この映画がその機会になればいいですよね。間違いなくいまこの時代を生きるすべての人に刺さる映画だと思います」
ちなみに丸山に映画の感想を送ったのかと尋ねると、「丸山くんからも『感想が聞きたいです』と連絡をもらって。じゃあ今度飲もうかという話になったのですが、なかなかスケジュールが合わなくて。だからまだちゃんと感想を伝えられていないんです」と苦笑い。「なので、丸山くんはぜひこの記事を読んでください!」と茶目っ気たっぷりにメッセージを送った。
取材・文/横川良明

■舞台「ハザカイキ」放送・配信情報
主演:丸山隆平×作・演出:三浦大輔
芸能界を舞台に時代の変容に踊らされる人々を描いた問題作
舞台「ハザカイキ」(2024年3-5月公演)
2025年5月3日(土・祝)17:30〜
WOWOWライブ、WOWOWオンデマンドで放送・配信!
▼詳細はこちら
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