「丸山くんは決して演技で嘘がつけない人」『金子差入店』で丸山隆平が見せた俳優としての進化を、演出家・映画監督の三浦大輔が語る

「丸山くんは決して演技で嘘がつけない人」『金子差入店』で丸山隆平が見せた俳優としての進化を、演出家・映画監督の三浦大輔が語る

「丸山くんがそこにいるように感じられる」

三浦から見た俳優・丸山隆平の魅力は「丸山くん自身がそこにいるように感じられるところ」。役者としての表現力を備えていることは大前提。そのうえで「役を演じていても、どこか丸山くんがそこにいて、ある種、ドキュメンタリーのように感じさせてくれるところがいいですよね」と称える。役ごとに別人のように変化するカメレオン型から、一瞬で役と一体化する憑依型まで、役者のタイプは様々。一方、スター性のある者ほど、自身の魅力や持ち味をベースにして演じることで役を輝かせることができる。

人に言えない過去を抱えている金子は、家族のために懸命に働く日々を送っている
人に言えない過去を抱えている金子は、家族のために懸命に働く日々を送っている[c]2025「金子差入店」製作委員会

この金子真司という役にも、丸山だから出せる魅力があった。「やっぱり丸山くん自身が“陽”の人だから、金子のような事情を抱えている役を演じていても、過度に辛気くさくなりすぎない。僕の知る丸山くんはコミュニケーション能力に長けていて、常に周りに気遣いができる人。そうしたところを役に反映させて演じていたように見えました」と指摘する。

また、映画監督としてカメラワークにも注目した。なかでも感嘆したのが、サイズ感やアングルの的確さだ。通常、芝居の見せ場ではアップショットが用いられることが多い。特に、本作のようなヒューマンドラマでは俳優がいい表情をしていればしているほど寄りで撮影したくなるのが心理。

パトカーのサイレンを聞き駆け付けると、息子の幼馴染が殺害された姿で発見される…
パトカーのサイレンを聞き駆け付けると、息子の幼馴染が殺害された姿で発見される…[c]2025「金子差入店」製作委員会

だが、本作ではあえて寄りきらず、腰から上を捉えたミドルショットを多用している。「その距離感が絶妙でした。どうしてもカメラが寄りすぎると、観客にとっては押しつけがましい印象になりがち。あえて距離を設けることで、観客も各々の目線で役の心情に寄り添いやすくなったんじゃないかと思います」と演出の妙を堪能した。

劇中では、割れた植木鉢のカットが何度か登場する
劇中では、割れた植木鉢のカットが何度か登場する[c]2025「金子差入店」製作委員会

間口の広い普遍的なヒューマンドラマだが、実は思わず感想を言い合いたくなる考察要素も。三浦の心に残ったのが、「割れた鉢植え」だ。劇中、何者かの嫌がらせのように金子差入店の植木鉢が割られる場面が何度か差し込まれる。それが、感動のエンディングが終わったあとにもう一度出てくるのだ。「万事うまくいったように見えても、すべて解決するなんてことはなくて、必ずなにか引っかかりは残る。人はそういうものを抱えて生きていかなければいけないというメタファーなのかな、と想像が膨らみました。違ってたらごめんなさい(笑)」と三浦も考察を楽しんだよう。もちろん正解はない。どう受け取るかは、観客次第。『金子差入店』は、そんな映画本来の楽しさを味わわせてくれる作品でもある。

三浦大輔がクリエイター目線で、作品の切り口や気になる演出、さらに丸山隆平の演技を語る
三浦大輔がクリエイター目線で、作品の切り口や気になる演出、さらに丸山隆平の演技を語る撮影/山田隼平


フィルムメーカーである三浦にとって、いい映画とはなにか。「映画に限らず、芸術全般に対して僕はあまり見たことのないものを見せてほしいという想いがあって。なにかしらチャレンジ精神のある映画はいい映画だなと思います」と定義づける。本作のチャレンジは、差入店という類を見ない切り口からオリジナル映画を完成させたことにある。「僕もオリジナルを書くので、それがどれほどチャレンジングなことかはよくわかります。だからこそいい映画だと思ったし、チャレンジをしている監督をはじめ、キャスト、スタッフのみなさんを応援したいなと勝手ながら思いました」と、同じ時代を生きるクリエイターの一人としてエールを寄せた。

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■舞台「ハザカイキ」放送・配信情報
主演:丸山隆平×作・演出:三浦大輔
芸能界を舞台に時代の変容に踊らされる人々を描いた問題作

舞台「ハザカイキ」(2024年3-5月公演)
2025年5月3日(土・祝)17:30〜
WOWOWライブ、WOWOWオンデマンドで放送・配信!

▼詳細はこちら
https://news.wowow.co.jp/2197.html
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