アニメ映画世界興収歴代1位『ナタ 魔童の大暴れ』のなにがすごい?知っておけばより楽しめるポイントを解説!

コラム

アニメ映画世界興収歴代1位『ナタ 魔童の大暴れ』のなにがすごい?知っておけばより楽しめるポイントを解説!

英雄と魔王、宿敵か親友?前作で登場人物の関係性を解説

まずは、物語の前提となる設定をできるだけわかりやすく紹介したい。つまり、前作『ナタ~魔童降臨~』にあたる部分だ。

古代中国で巨大なエネルギーを持つとされる天界の秘宝「混元珠(こんげんじゅ)」が最高神・元始天尊によって「霊珠」と「魔丸」の2つに分けられた。「霊珠」は人に生まれ変わって英雄となる運命を持ち、「魔丸」は魔王を生みだす宿命を背負っている。

魔王として人々に嫌われていた、ナタ(『哪吒之魔童鬧海』)
魔王として人々に嫌われていた、ナタ(『哪吒之魔童鬧海』)[c]EVERETT/AFLO

命を受けた仙人・太乙真人(タイイツシンジン)は、「霊珠」を陳塘関(ちんとうかん)という場所を守る武将・李靖(リ・セイ)の子・ナタに生まれ変わらせることになっていた。しかし、手違いで2つが入れ替わり、本来英雄になる宿命であったナタに「魔丸」が宿ってしまう。ナタは英雄になりたいという思いを抱えながら、魔王として人々から差別を受けることに…。

ナタは母親の3年以上の妊娠を経て、ようやく生まれた
ナタは母親の3年以上の妊娠を経て、ようやく生まれた[c]EVERETT/AFLO

一方の「霊珠」は、東海龍王の子・敖丙(ゴウヘイ)に生まれ変わる。ある日、本来宿敵となるはずだったナタとゴウヘイは、偶然に出会い親友になる。だが、戦いに巻き込まれ、対立した2人は激闘の末、魂だけを残して肉体は消滅してしまう…と、ここまでが前作のストーリー。『ナタ 魔童の大暴れ』は、ナタの師である太乙真人がナタとゴウヘイの肉体を仙術の入ったレンコンの粉(!)を使って再生しようとするところから幕を開けるのだ。

魂だけ残したナタとゴウヘイの肉体作りから始まる『ナタ 魔童の大暴れ』
魂だけ残したナタとゴウヘイの肉体作りから始まる『ナタ 魔童の大暴れ』プロデュース&製作;可可豆動画 彩条屋影業

前作のストーリーのほかに押さえておきたいのは、ナタとゴウヘイの師匠同士の関係性。ナタの師匠は仙人の太乙真人で、ゴウヘイの師匠は見るからに曲者というビジュアルの申公豹(シンコウヒョウ)だ。この2人、実は同じ元始天尊を師とする兄弟弟子である。

名前の「豹」の字からもわかるように、申公豹はもともと豹の妖怪であり、修練を積んで現在の姿となったといういきさつがある。この映画の世界では、人間も妖怪も、修練を積んで仙界に上り、仙人となることに憧れている。ゴウヘイが属する龍族も属性としては妖怪であり、いつか天界に上がりたいというのが一族の願いだ。「霊珠」を得たことで英雄となる未来が開けたゴウヘイは、そんな龍族の期待を一身に背負い、大きな重圧を感じている。これを踏まえたうえで本作を観ると、作品をより楽しめるのではないかと思う。

【画像を見る】見た目から麗し一族…!息子のゴウヘイに龍族の一族の期待を託す、東海龍王のゴウコウ
【画像を見る】見た目から麗し一族…!息子のゴウヘイに龍族の一族の期待を託す、東海龍王のゴウコウプロデュース&製作;可可豆動画 彩条屋影業

本作のベースとなっているのは、中国の古典小説「封神演義」。ナタというキャラクターは、これまで数え切れないほどの文学作品や戯曲、漫画や映像作品として語り継がれてきた。日本人にとっては「封神演義」より馴染みの深い「西遊記」にも登場する。

火尖槍(紫色の火や煙を放てる焔形の槍)を握るナタは高い戦闘力の持ち主(『哪吒之魔童鬧海』)
火尖槍(紫色の火や煙を放てる焔形の槍)を握るナタは高い戦闘力の持ち主(『哪吒之魔童鬧海』)[c]EVERETT/AFLO


ちなみに、中国本国で大ヒットしたアニメ映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(15)や、『ナタ転生』(21)は、どちらもネットフリックスで観ることができる。日本にもファンが多い中国のアニメ映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』(19)にもナタが登場する。

同じ「封神演義」をベースにしたアニメ映画『ヨウゼン』(22)も現在日本で公開中で、実写映画でも近年「封神」シリーズが中国でヒットし、日本でも第一部『封神・妖姫とキングダムの動乱』(23)、第二部『封神・激闘!燃える西岐攻防戦』(25)が劇場公開されている。このように、ナタが登場する様々な作品が中国神話版MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のように広がっているのだ。

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