土井裕泰監督が『片思い世界』の“あの秘密”を語る。「最初にタイトルから受け取ったイメージが、観ていくうちに変わっていく作品」
東京の片隅、古い一軒家で暮らす、美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)。彼女たちの誰にも言えない“究極の片思い”が描かれる『片思い世界』が公開中だ。『花束みたいな恋をした』(21)と同じ、脚本家・坂元裕二×監督・土井裕泰の4年ぶりの再タッグに歓喜するファンは多いことだろう。土井監督いわく、本作は坂元裕二からの逆オファーで実現したという。
※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。
「『花束みたいな恋をした』は若者たちのささやかな恋愛映画。映画スケールの大きな事件が起こるわけではないですが、それがあれだけ多くの人に受け入れられ、広がったことは驚きでした。坂元さんはご自身のことを、長い話数のある連続ドラマで人間を掘り下げていくことに向いている作家だと思っていたそうですが、映画というパッケージでもたくさんの反響をいただき、坂元さんも僕も『映画』というものに少しだけ手が届いたような喜びがありました。ロングラン上映が終わるぐらいのころに、坂元さんから『またプロデューサーの孫(家邦)さんと僕と、同じ座組でもう1本映画をやりたい』という話をいただきました。その時から『広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果耶さんの3人を主演として書きたい』と話していて、それはもうぜひやりましょうということで企画が動き始めました」。
まさか、『花束みたいな恋をした』の公開中にもう次作の話を進めていたとは。主演の3人がオファーを快諾したのは、まだ脚本もなにもないタイミング。時代を彩る名俳優たちのトリプル主演が実現できたのは、脚本家・坂元裕二×監督・土井裕泰のタッグの信頼感もあってのことだろう。
「ヒットした作品のあとだと、同じ路線のものを期待されがちですが、なんとなく坂元さんからは『花束』の時とはまったく違う方向へ向かいたいという想いを感じていました。その勇気を、僕はすごくステキだなと思いましたし、共に挑戦できるということがうれしかったです」。