原作のイメージにも重なる!?『山田くんとLv999の恋をする』作間龍斗が山田役にぴったりな理由
過去の出演作から紐解く作間龍斗の演技力の高さ
作間の演技力の確かさは、出演作のジャンルの幅の広さが証明している。記念すべきスクリーンデビュー作は、綿矢りさの同名小説を映画化した『ひらいて』(21)。高校生男女3人のエキセントリックな三角関係を描いた作品で、作間はスクールカースト上位の女子、愛(山田杏奈)に熱烈に片想いされる、哀しい目をした地味男子たとえを演じた。恋愛ものとはいえ、アイドルの映画デビュー作とは思えない衝撃的な物語であり、作間のミステリアスな存在感を印象づけた本作が、彼の俳優としての方向性に影響を与えたことは間違いない。
閉鎖的な日本の集落を舞台にしたヒューマンサスペンス『ヴィレッジ』(23)では、主人公の優(横浜流星)の幼なじみである美咲(黒木華)の弟、内向的でコミュニケーションが苦手な青年、恵一役で出演。登場シーンこそ多くないものの、彼が目にし、取った行動が結果的に登場人物すべての運命を変えてしまうというキーパーソン。エンドロール後のシーンでも、恵一こそが、この物語の影の主役だったのではないかと思わせるほどの重要な役割を果たしていた。
初の大河ドラマ出演作となった「どうする家康」で作間が演じたのは、豊臣秀吉最愛の女性、茶々(北川景子)の次男である豊臣秀頼。作間の個性ともいえる凛とした品のよさは、豊臣家復活の期待を一身に背負う貴公子役にぴったりとハマっていた。一方、大河ドラマと同時期に放送されたファミリードラマ「コタツがない家」では、会社社長でしっかり者の主人公、万里江(小池栄子)の長男で、アイドルを夢見るも、オーディションに落ちて進路に迷う高3の受験生、順基という意表を突くキャラクターを好演。これまで優等生役が多かった作間がダメ男を演じる姿は新鮮で、彼の芸達者ぶりを再認識できた。
シリアスな人間ドラマからコメディ、時代劇から現代劇、22歳という若さにして、振り幅が広く、クリエイターから厚い信頼を寄せられる作間。そんな彼だからこそ演じることができた本作の山田のキャラクター、“いまこの年代”の作間のキラキラした魅力がギュッと詰まったキュートでさわやかなラブストーリーをぜひ堪能してほしい。
文/石塚圭子