『白雪姫』音楽演出が語る、吉柳咲良や河野純喜のレコーディング秘話&ディズニー・クラシックの偉大さ
「ディズニー・クラシックの名曲は、いろいろなアレンジで時代と共に受け継がれてきました」
このように1937年の『白雪姫』の曲が、90年近く経った現在の映画で使われ、まったく色褪せない輝きを放つことから、島津は改めてディズニー・クラシックの偉大さを実感したという。
「ディズニー・クラシックの名曲は、いろいろなアレンジで時代と共に受け継がれてきました。例えば『白雪姫』の『いつか王子様が』などは、ジャズバージョンやテクノ調、ポップス調が作られたりしつつ、どのようにアレンジされても成立し、愛されています。それくらいメロディが普遍的。時代が経ってもサビつかず、それでいて懐かしさも漂う。むしろ一周回って新しさを感じることさえあります。ですから今回の『白雪姫』のように新しい曲と組み合わさっても違和感がないのです。ディズニーの名曲は、子ども時代は美しい部分を感じたのに、大人になると違う側面が浮き上がってきたりして、永遠に輝きを失いません。ダイヤモンドのようなものでしょう」。
今回の『白雪姫』のためにクラシックの名曲をアップデートし、新曲を作りだしたのが、『ラ・ラ・ランド』(16)、『グレイテスト・ショーマン』(18)など近年の大ヒットミュージカルを手掛けてきたベンジ・パセク&ジャスティン・ポールのコンビ。彼らの才能があってこそ、この『白雪姫』の音楽が時代を超えてひとつに結びついたと、島津は感激する。
「彼らの曲で驚くのは、アニメ版と違ったテイストでも、リプライズとして何度か流れるうちに、『この曲、1937年のアニメ版にも流れていたかも…』と錯覚してしまうこと。それくらいディズニー・クラシックと親和性があるメロディを創りだしているんです。そしてこの2人ならではの魅力は、コーラスの音圧とそれに包まれる感覚にあります。そこは映画館で観ればわかってもらえるはず。私たち吹替版のスタッフも、360度、音に囲まれて観てもらうという前提で音を完成させました。コーラスを複数に分けて録音したり、リードのボーカルも立体感を意識して、『ささやくように』『遠くに向かって』など繊細に演出したのです。そのこだわりの音を、ぜひ皆さんに映画館で感じてもらえればうれしいですね」。
音楽の魅力で映画を観る喜びに浸る。ディズニーの伝統が新たな次元に達したことを『白雪姫』で実感してほしい。
取材・文/斉藤博昭