『白雪姫』音楽演出が語る、吉柳咲良や河野純喜のレコーディング秘話&ディズニー・クラシックの偉大さ
「改めて感動するのは、吉柳さんの歌声が『夢に見る 〜Waiting On A Wish〜』という曲の一部になっている」
歌詞が完成して、いよいよレコーディング。ここからは吹替版キャストへの直接の演出が待っている。今回の白雪姫を担当するのは、吉柳咲良。舞台「ピーター・パン」の主役でミュージカル経験もある、現在20歳の伸び盛りの才能だ。「吉柳さんの声は、地力として力強いけれど、押し付けがましくなくピュアで透明感がある。そのうえで音域も広い。ポップス的な歌唱が得意な吉柳さんとは、『口笛ふいて働こう』でクラシカルな歌い方をアドバイスしたり、シリアスなパートであえて私が口数を少なくして集中してもらったり…というやりとりでした。このような作品ではセリフの延長で歌に入ったりするので、お芝居の部分と温度差が出ないよう、お互いに試行錯誤で作り上げた感じです。いま改めて感動するのは、吉柳さんの歌声が『夢に見る 〜Waiting On A Wish〜』という曲の一部になっていることでしょうか」。
アニメ版で白雪姫の運命を大きく変えたのが、プリンス・チャーミングこと王子。今回、そのキャラクターに当たるジョナサン役を任されたのが、人気グローバルボーイズグループJO1の河野純喜。本作で初の吹替に挑んだわけだか、今回は王子とは異なるキャラクター設定でもある。「河野さんはいわゆるイケボなので、どう歌っても甘いムードが漂います。ただ今回は王子様という役どころではないので、そのイケボを少しワイルドにして、芝居がかった部分を引きだせるように努めました。河野さんにとって演技をしながら歌うことには最初、戸惑いもあったと思いますが、こちらのアドバイスに嫌な顔ひとつせず、いろいろな挑戦をしてくれました。ジョナサンの歌の中のセリフっぽい部分など、ファンの方が聴いたら悶絶するかもしれません(笑)」。
キーパーソンとなるのが、白雪姫を恐ろしい運命に追いやる女王。元宝塚歌劇団月組のトップスターで、昨年夏に宝塚を卒業した月城かなとが声の演技に挑んだ。「歌唱力は申し分なく、人柄もチャーミングで優しく、謙虚な月城さんなので、いかに邪悪さ、ねちっこさを出してもらえるかがチャレンジでした。『いまのでは、まだ優しいです。もっと邪悪に!』と背中を押す演出で(笑)。女王には老女のパートもありますから、ふだんとは真逆のキャラクターを月城さん本人も楽しんでくれたと思っています。英語版以上の“女王キャラ”が完成したのではないでしょうか」。
そして『白雪姫』といえば7人のこびと。今回もオリジナルを踏襲して個性豊かな7人のキャラクターが登場し、担当した面々も名優からベテラン声優、芸人まで多様。“先生”に大塚明夫、“おこりんぼ”にダイアンの津田篤宏、“ごきげん”を小島よしお、“ねぼすけ”を浪川大輔、“くしゃみ”を日野聡、“てれすけ”を平川大輔が演じている。「こびとさんは意外と広い音域が必要で、みなさん『こんな高い声を出したことはない!』と苦心していたようです。おこりんぼ役の津田さんは『準備期間中は家でもずっと怒ってました』というくらいで、本番でもキレまくってくれました(笑)。ごきげん役の小島さんは、いつもの『オッパッピー』とは別方向の、かわいらしい機嫌のよさが求められたので、そこを小島さんから引きだす演出は楽しかったですね」。
こびとたちが歌うのは、「ハイ・ホー」「口笛ふいて働こう」といったアニメ版の名曲のため、「いくら時代が変わって新しい白雪姫の物語になったとしても『この部分のこういう歌い方は変えてほしくない』というクラシックのよさも意識してもらいました」とのこと。