高校生活の影に潜む、根深い闇に背筋が寒くなる『遺書、公開。』など週末観るならこの3本!

コラム

高校生活の影に潜む、根深い闇に背筋が寒くなる『遺書、公開。』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、一人の少女の遺書をきっかけに高校生たちの本性があぶりだされるミステリー、アニメーション作家の安田現象による劇場用長編アニメーションプロジェクト第1弾、ポーランドを巡る従兄弟の姿を描くロードムービーの、考えさせられる3本。

クラスメイトたちのドス黒い本性が次々と暴かれていく…『遺書、公開。』(公開中)

【写真を見る】主演の吉野北人をはじめ、宮世琉弥、松井奏、堀未央奈ら若手俳優が集結(『遺書、公開。』)
【写真を見る】主演の吉野北人をはじめ、宮世琉弥、松井奏、堀未央奈ら若手俳優が集結(『遺書、公開。』)[c]2024 映画「遺書、公開。」製作委員会 [c]陽東太郎/SQUARE ENIX

陽東太郎の同名コミックを「東京リベンジャーズ」シリーズの英勉がTHE RAMPAGEの吉野北人主演で実写化した学園ミステリー。ある日、突然、クラスで序列1位だった姫山椿(堀未央奈)が自殺した。葬儀の翌日、教師を含めたクラス全員に椿からの遺書が届き、総勢25人は彼女の自殺の真相を突き止めるため全員の前で一人ずつ遺書を公開していくことになる。

“大切な椿を死に追いやった原因を突き止める”という椿の親友の熱きひと言を発端に、クラスメイトたちのドス黒い本性が次々と暴かれていくショッキングな展開は、逃げ場のない教室という密室を舞台とするシチュエーションスリラーを観ているかのよう。突如明らかとなる人間関係にいささか唐突感はあるものの、クラスメイトを演じた宮世琉弥、松井奏、高石あかりほか若手実力派たちの鬼気迫る演技に目を奪われる。その一方、学級崩壊を脇から見つめる序列下位の主人公を演じた吉野や、主人公と同様の立場の級友を演じた志田彩良による傍観者的立ち位置も皮肉たっぷり。スクールカーストの頂点に立つ椿はなぜ命を絶たねばならなかったのか。彼女を死に追いやった犯人とは?青春を謳歌するはずの高校生活の影に潜む、根深い闇に背筋が寒くなる衝撃作。(ライター・足立美由紀)

ジェットコースターのように感情が揺さぶられる…『メイクアガール』(公開中)

安田現象が手掛ける長編アニメーション『メイクアガール』
安田現象が手掛ける長編アニメーション『メイクアガール』[c]安田現象 / Xenotoon・メイクアガールプロジェクト

個人制作の3DショートアニメやMV制作などで人気、SNS総フォロワー数が600万超の安田現象が、監督、原作、脚本などを手がけた初の長編3DCGアニメーション。「SPY×FAMILY」のアーニャ役、「葬送のフリーレン」のフリーレン役で知られる種崎敦美を筆頭に、堀江瞬、雨宮天、増田俊樹、花澤香菜など人気声優が熱演する。

天才科学少年の水溜明(堀江)は、自分の目的の為に人造人間のカノジョ“0号”(種崎)を作る。少しずつ“カノジョ”として成長し愛を知っていく0号だったが、自分の気持ちになかなか応えてくれない明に、0号の中に様々な感情が芽生えていく…。一見ロボット彼女とのラブコメかと思いきや、その実は、愛と嫉妬と謀略が渦巻く“新感覚サイバーラブサスペンス”。0号の可愛さと健気さにキュン。明の技術を狙う者との、スリリングなチェイスシーンにワクワク。そして終盤に訪れるダークな展開にドキッ。ジェットコースターのように感情が揺さぶられ、いろいろ考えさせられる作品だ。(ライター・榑林史章)

コミカルとシリアスが絶妙に混じり合う…『リアル・ペイン~心の旅~』(公開中)

ジェシー・アイゼンバーグが監督、脚本、製作、主演の4役を務める『リアル・ペイン~心の旅~』
ジェシー・アイゼンバーグが監督、脚本、製作、主演の4役を務める『リアル・ペイン~心の旅~』[c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

兄弟のように育ちながら疎遠になっていた従兄弟が、最愛の祖母の故郷ポーランドへ旅することに。繊細な青年を演じさせたら右に出る者ナシのジェシー・アイゼンバーグが、『僕らの世界が交わるまで』(22)で監督デビュー、その才にアッと驚かせたのも束の間。監督2作目の本作は、ユダヤ系である自身の私的で親密な経験や出自から出発しながら、さらに深みと広がりを増して観る者の心を震わせる。男2人の旅路は、まさに珍道中。すべては子どもみたいな自由人ベンジーが引き起こすが、それを受ける真面目な常識人デヴィッドとの関係性やキャラの対比が効いている。

我々観客同様、ツアー客もベンジーの言動にイライラさせられつつ、同時に目が離せず惹かれてしまう。毎度フォローするデヴィッドの貧乏くじぶりが、ちょっとイタくて笑える。ナチスの爪痕がザックリ残る史跡を巡りながら、ツアー参加者と交流するなかで、2人が抱える傷や痛みが浮き彫りになっていく。特にベンジーの不安定さやエキセントリックな言動が、傷つきやすい繊細さの裏返しと分かるにつれ、さらにグッと引き寄せられる。演じるキーラン・カルキンの存在感や演技が白眉(オスカーにもノミネート中)!監督自身が演じるデヴィッドも、見事な匙加減。コミカルとシリアスが絶妙に混じり合い、重量感はあるのに味わいは実に軽やか。旅路の果てから、いつまでも後ろ髪を引かれてやまない。(映画ライター・折田千鶴子)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

※高石あかりの「高」は「はしごだか」が、種崎敦美の「崎」は「たつさき」が正式表記

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