アクロバティックな超絶忍者アクションが炸裂!『アンダーニンジャ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、現代で暗躍する忍者たちの戦いを描くアクションコメディ、疫病と闘った無名の町医者の実話を描く時代劇、「第2回日本ホラー映画大賞」大賞に輝いた近藤亮太の商業長編映画監督デビュー作の、監督の個性が光る3本。
誰も止められない福田節が全開!…『アンダーニンジャ』(公開中)
「アイアムアヒーロー」などで知られる花沢健吾の人気コミックを、「銀魂」シリーズなどの奇才、福田雄一監督が『斉木楠雄のΨ難』(17)、『ヲタクに恋は難しい』(20)に続く山崎賢人との3度目のタッグで実写映画化!いまも世界中に暗躍している現代忍者の戦いと活躍を原作の世界観やディテールを忠実に再現しながら、今回も誰もが期待する忍者アクションと脱力系の笑いがクセになる福田ワールドをいい絶妙なバランスでブレンド。そのすべてを若手の実力派俳優たちの競演で視覚化しているのだから、何とも贅沢だ。
しかも、戦いのシチュエーションや見せ方もバラエティに富んでいて、白石麻衣が扮したくノ一の鈴木と忍者狩りのアレクセイとのバトルに山崎演じる雲隠九郎が参戦する冒頭の登場シーンからアクロバティックな超絶忍者アクションが炸裂!中国武術を3歳から習い、『キングダム2 遥かなる大地へ』(22)などですでにアクションには定評のある謎の美少女、山田美月役の山本千尋を始め、エリート忍者の加藤に扮した間宮祥太朗、狂気の抜け忍、猿田役の岡山天音、熊のぬいぐるみを抱いた可愛らしいルックスとは裏腹に性格は残忍な蜂谷紫音を演じた宮世琉弥らが、キレッキレの動きで個性強過ぎのそれぞれのキャラになりきっているのだからたまらない。
福田映画の代名詞とも言える“笑い”の方も手加減なしだ。九郎と隣の部屋に住む大野に扮したムロツヨシが押し入れの襖を開け締めしながら何度も何度も何度も何度も繰り返す乾いたギャグや、本作の語り部となる福田映画のもう一人の住人、佐藤二朗の暴走に白石麻衣が思わずバタバタと逃げ出すシークエンスを始め、もはや誰も止められない福田節が全開!ヒロインの女子高生、野口彩花に扮した浜辺美波が初めて参加の福田組の洗礼を受け、全力でギャグに挑み、「銀魂」の橋本環奈に勝るとも劣らない変顔をしているのも見逃せない。(映画ライター・イソガイマサト)
町医者と周囲の人々による命のバトン…『雪の花 ―ともに在りて―』(公開中)
江戸時代末期、死に至る病として、猛威を振るっていた疱瘡(天然痘)ウィルス。次世代のために当時は前代未聞の種痘(予防接種)という方法に一縷の望みをかけ挑んだ、町医者と周囲の人々による命のバトンがあった。日本の未来を救おうと蘭学を一から学び直した医師の執念と彼の志をなにも言わずにバックアップした妻の献身。医療者の高い使命感と尊い夫婦愛を感じ、時代劇といえども、ヒューマンドラマの味わい。
実在の漢方医、笠原良策を松坂桃李、その妻に『居眠り磐音』(19)でも松坂の許嫁役だった芳根京子が扮し、息のあった演技を見せる。特に松坂の子どもに向ける眼差しが芯から優しく穏やかで、子役たちの安心感が伝わってくるよう。対照的に豪華キャストによる大人たちの場面は荘厳。フィルム撮影ならではの大胆な空気の緩急は黒澤組ゆかりのスタッフが参加する小泉堯史監督作品の醍醐味。影の主役というべき存在感の日本の四季折々のダイナミックな光景にも畏敬の念を抱く。(映画ライター・高山亜紀)
現代の怪談というべき恐怖劇…『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)
行方不明者の捜索番組という形をとったモキュメンタリードラマ「TXQ FICTION/イシナガキクエを探しています」が話題を呼んだ近藤亮太監督の長編デビュー作。本作でも再び人間の“失踪”というテーマに取り組みつつ、古い“ビデオテープ”や“神隠し”の都市伝説、そして存在しないはずの“廃墟”といったモチーフを織り交ぜ、現代の怪談というべき恐怖劇を紡ぎ上げた。
主人公の青年、敬太(杉田雷麟)は、幼い頃に一緒にかくれんぼをしていた弟が行方不明になった過去を引きずっている。母親から送られてきた1本のビデオテープをきっかけに、そのトラウマと向き合っていく敬太の思いがけない運命を映しだす。派手なギミックやジャンプスケア描写が多用されがちな昨今のホラーとはまったく異なり、徹底的に“静寂”の不気味さを重んじた作風が印象的。やがて鬱蒼とした山の奥深くへと足を踏み入れた主人公は、そこでなにを目撃するのか。観る者をこの世ならぬ異界へと誘う繊細な語り口が、じっとりとまとわりつくようなJホラー特有の怖さを創出している。(映画ライター・高橋諭治)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記