やくざ映画の在り方を変えた伝説の1本!『竜二』金子正次が遺したものの大きさ
日本映画史に名を刻む1本になった『竜二』
アウトローであるやくざが、自らアウトローであることを否定する。その選択に時代の新たな主人公像を見つけて、筆者も含めた当時の観客たちは心を揺さぶられた。そういう映画を東映セントラルフィルムで配給したのが東映のすごいところで、自分たちが作り上げてきたやくざのヒーロー像を壊すこの作品の登場で、東映のやくざ映画も変化していった。
先に挙げた『ちょうちん』や『恋子の毎日』(88)など、組織の仕事と堅気の間で揺れるやくざを描いた“ネオやくざ映画”が東映で作られた。ただどれも『竜二』ほどのインパクトを持たなかったのは、本作が病を背負いながら自主製作で作品を作り上げた金子の熱意が宿っていたことと、インディーズ映画ならではのささやかでつましい竜二とまり子の生活描写が、圧倒的なリアリティをもって観る者の胸を打ったからだ。
金子はこの演技で日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールなどの新人賞に没後輝き、永島もブルーリボン賞、報知映画賞、キネマ旬報ベスト・テンなどの助演女優賞を受賞。彼らの名演と共に、この作品はやくざ映画の方向を変え、日本映画史に名前を刻む1本になったのだ。
10月30日(金)からは、水田伸生監督、柳楽優弥主演による『RYUJI 竜二』が公開される。こちらはストーリーラインこそ『竜二』と同じだが、時代背景は1984年から1990年に移していて、やくざの在り様も竜二夫婦の生活ぶりも、1983年版とは少し違う。そういう意味でリメイクというより、リボーン映画と呼ぶべきものだが、40年以上の時を超えて再びこの題材に光が当てられていることを思うと、金子正次が遺したものの大きさを、改めて感じさせる。一度は観ておきたい、80年代を代表する人間ドラマの名編だ。
文/金澤誠
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