やくざ映画の在り方を変えた伝説の1本!『竜二』金子正次が遺したものの大きさ

コラム

やくざ映画の在り方を変えた伝説の1本!『竜二』金子正次が遺したものの大きさ

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金子正次が原作・脚本・主演を務め(原作・脚本は「鈴木明夫」名義)、川島透が監督した『竜二』(83)の4Kスキャン2Kリマスター版が、10月23日(金)より期間限定で公開。40年以上も前に公開されたこのインディーズ作品が、なぜいまも伝説として語り継がれているのか。当時一番ショッキングだった話題は、1983年10月29日に公開初日を迎えたなか、金子が同年11月6日に胃がん性腹膜炎によって、33歳の若さで亡くなったことである。

俳優兼脚本家だった彼が遺した脚本はほかにもあって、それらは『チ・ン・ピ・ラ』(84)、『ちょうちん』(87)、『獅子王たちの夏』(91)として映画化され、金子の才能を悼む声が後を絶たなかった。ただそれは、金子自身がのちに伝説化されたのであって、公開当時にメイン上映館の新宿東映ホール2が連日満員になり、当初は全国5、6館だった上映館が、12月下旬から全国ロードショーされた作品の盛り上がりとは、切り離して見る必要がある。筆者は公開時に新宿でこの映画を初めて観たが、衝撃を受けたことを覚えている。

アウトローとしてのやくざではなく、今後の進路に悩む等身大の30男として設定

竜二(金子)は新宿のやくざで、直(佐藤金造)やひろし(北公次)といった舎弟がいる。羽振りはよかったがどこか満たされず、別れた妻のまり子(永島暎子)と幼い娘との生活を取り戻すため、堅気になる決意をし、酒屋で真面目に働き始める。だが、覚醒剤に溺れたかつての兄弟分が死に、ひろしの変貌も目の当たりにしたことで竜二の心は揺れ動く。過去のしがらみから、何度もやくざの世界へ引き戻されそうになる彼の葛藤、そして最後に下す決断を作品は映しだしている。

【写真を見る】原作、脚本も手掛けた金子正次自らが、家族との生活のため、堅気になることを決めた竜二を演じる
【写真を見る】原作、脚本も手掛けた金子正次自らが、家族との生活のため、堅気になることを決めた竜二を演じる[c]1983 Momo KANEKO ALL RIGHTS RESERVED.

本作は過去に東映のやくざ映画が描いてきた、やくざをヒーローのアウトローではなく、今後の進路に悩む等身大の30男として設定した。竜二は職業としてのやくざの世界と、地道で平穏な家族との幸せを天秤にかけ、家族との生活を選ぶ。酒屋の仕事は羽振りのよかったやくざ時代とは違って、わずかな実入りしかない。それでも妻や娘に囲まれた穏やかなアパート暮らしが幸福であることを、この映画は丁寧に描いている。それは金子と妻を演じた永島暎子の好演によるところが大きく、彼らの生活感漂う日常描写が非常に印象的。そのため公開当時は、“ホームドラマ調やくざ映画”とも呼ばれた。


時代の変化を見据えていた金子正次と松田優作

1960年代は東映任侠映画、70年代には『仁義なき戦い』(73)に始まる東映実録やくざ映画がブームを呼び、アウトローが時代のヒーローになった。70年代後半には、金子と親友だった松田優作が「遊戯」シリーズや『蘇える金狼』(79)、『野獣死すべし』(80)によって、ハードボイルドヒーローとして一躍人気を集めた。だがその優作も『陽炎座』(81)、『家族ゲーム』(83)によって、演技派俳優へと転身。時代を牽引してきた優作が、もはやアウトローの時代ではないと方向性を変えた頃に、この『竜二』は登場した。金子と優作は、同じように時代の変化を見据えていたのである。

やくざを今後の進路に悩む等身大の30男として設定
やくざを今後の進路に悩む等身大の30男として設定[c]1983 Momo KANEKO ALL RIGHTS RESERVED.
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