テニスがテーマの新基軸ユーロホラーに、ジェシカ・ロースが大フィーバー!ファンタスティック・フェスト2026レポート
テキサス州オースティンで2005年にスタートした、アメリカ最大のファンタスティック映画祭、ファンタスティック・フェスト(Fantastic Fest)。第21回を迎えた今年は、9月17日から24日まで8日間開催された。NEONの創立者の一人、アラモ・ドラフトハウス・シネマのティム・リーグが創設したこのジャンル映画にフォーカスした映画祭だが、オースティンといえば、ロバート・ロドリゲスの製作会社トラブルメイカー・スタジオがあり、リチャード・リンクレーターも居住し数々の監督作を撮り、巨匠テレンス・マリックも住んでいる、テキサスの中でもリベラルな都市として知られる。トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(74)も、オースティンの北にある町ラウンドロックなどで撮影された。
僕は2011年に生まれて初めてテキサスの地に降り立ち、ファンタスティック・フェストに参加したが、今年は初めてオンラインという形で同映画祭に参加した。リモート参加なので、すべての作品を観ることができたわけではないが、何本か興味深いホラーに出会うことができた。その一本が、『Bloody Tennis(原題)』。ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演のスリラー『7500』(19)や、A24が北米配給したアン・ハサウェイ主演のスリラー『Mother Mary(原題)』(26)のプロデューサー陣が製作した、ベルリン在住の監督ニキアス・クリッソスの最新作だ。スペインとドイツで撮影が行われ、アメリカの配給権は、ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア前にホラー配信大手のShudderが獲得した。
ストーリーはこうだ。ウィンブルドン大会参加のワイルドカードの座をかけて、優秀な若手女性テニスプレイヤー6人が南ヨーロッパの山奥のエリート・アカデミーに招待される。彼女たちはそこで激しいトレーニングを積みながら、トーナメントに参加し最後の一人の勝者を目指すが、アカデミー主催者たちには邪悪な思惑があった...。
ブラッディときてテニスである。どんな映画なのか想像するのは難しくない。が、ホラーコメディを予想していたらシリアスな作品だったのは嬉しい驚きだった。スポーツホラーといえば、バレエとサイコロジカルホラーを融合した『ブラック・スワン』(バレエはアートフォームでありダンスだが、肉体的・精神的に要求される過酷さはスポーツの領域に入る)や、ジョーダン・ピールが製作したマーロン・ウェイアンズ主演のアメフトホラー『Him(原題)』(25)、オリヴィエ・アフォンソが監督した、女子バレーボール部の命懸けの戦いを描いたフランスの過激コメディホラー『スパイク・ガールズ』(18)など本数はそんなに多くはないが、ホラーとスポーツの親和性は低いわけではない。
『Bloody Tennis(原題)』は、ドイツのバレエ寄宿学校を舞台にした『サスペリア』(77)や、スイスの寄宿学校を舞台にした『フェノミナ』(85)といったダリオ・アルジェント作品を彷彿とさせつつ、ボディカウントは多めで、テニスボールが人体を貫通するゴアシーンも当然ある。欧州各国から集められた若い女性アスリートたちの過酷な戦いや、激しいライバル関係や友情、恋愛も描かれる。正直、プロットはあまり誉められたものではなく、犠牲になる女性たちも一方的に突然殺されるだけで、ほとんどのキャラクターの描き方も浅い。ダイアローグもお粗末ではある。悪役たちの存在感も薄めだ(サスペリア風の魔女っぽい女性も登場。彼女の相棒を演じるのは『逆転のトライアングル』の怪優ズラッコ・ブリッチ)。
しかし、ゴア描写の数々には情熱を注いでおり、映像はスタイリッシュで、テニスの試合もスリリング。主人公ソフィーを演じたデンマーク人女優、サンドラ・グルベルグ・カンプの強力な目力と面構え、鬼気迫る演技は天晴で、彼女のライバルであり恋人になる女性バナとの親密な関係や葛藤の描写は細やかだ。陰湿なキャラクターを演じたリリー・タイエブ(『ベルイマン島へ』)と、ジャック・オーディアール監督の秀作『パリ13区』(21)で主演を演じたルーシー・チャンという2人のフランスの新進女優たちとのアンサンブルも見応えがある(3人とも2000年生まれの26歳というのは偶然だろうか?)。女性主導の新たなユーロホラー。今後も、もっとこういう作品が観てみたい。『Bloody Tennis(原題)』は日本配給も決まっているようなので、来年には劇場公開されるだろうか?
これ以外にも、映画祭のオープニングでは『バイオハザード』(26)のワールドプレミアが開催され、監督ザック・クレッガーと主演オースティン・エイブラムスが来場(オースティンだけに)。トロント国際映画祭のミッドナイトマッドネスでお披露目され、激しい争奪戦が繰り広げられた結果、ユニバーサル・ピクチャーズとブラムハウス・アトミックモンスターが1000万ドルで配給権を獲得した、ジェシカ・ロース、ジェーン・レヴィ主演のスラッシャーホラー『River(原題)』のアメリカ・プレミアも行われたが、他にもロース主演の2作品、南米アマゾンを舞台にしたモンスターホラー『Beware Boiuna(原題)』と、ロマンスホラー『Pathetic Fallacy(原題)』のワールドプレミアも行われ、いずれの作品も好評を博した。ジェシカ・ロース(39歳)、ここに来て大フィーバー中。これでロースの出世作の3作目『Happy Death Day to Us(原題)』の製作も加速するだろうか?
文/小林真里

