クラシック・モンスターからSF、ヒッチコックまで!「ひつじのショーン」最新作が公開となるアードマン作品に散りばめられた映画オマージュたち
ヒッチコック的なスリリングな演出も光る「ウォレスとグルミット」
アードマンの代表的シリーズの一つである「ウォレスとグルミット」。テレビシリーズや多くの短中編が作られてきたシリーズの初の長編にあたり、第78回アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞した名作が『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(05)だ。
町の畑を荒らすウサギを捕らえる仕事を始めた発明家のウォレスと忠犬グルミットが、ウサギを野菜嫌いにすることを思いつき、心を操る発明品で一匹のウサギに実験をしたことから巻き起こる騒動を描く。
「The Curse of the Were-Rabbit」という原題のサブタイトルからもわかるように、怪しげな実験によってモンスターを生みだしてしまうという「フランケンシュタイン」や「狼男」映画など、数々のクラシック・モンスターの影響が随所に感じられる。あるキャラクターが月夜に照らされたことで“ウサギ男”へと変身するシーンは、手が伸びる様子などリック・ベイカーの匠の技が光る『狼男アメリカン』(81)をそっくりそのままオマージュしているほどだ。
また巨大化したウサギ男が建物によじ登るなど、町を襲うシーンは『キング・コング』(33)を彷彿とさせ、古きよきモンスター映画への愛にあふれた1作となっている。
「ウォレスとグルミット」でシリーズを通じて多く登場するのが、サスペンスの巨匠ヒッチコックへのオマージュだ。例えば、1993年に作られた短編『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』の原題『The Wrong Trousers』は『間違えられた男(The Wrong Man)』から来ており、『下宿人』(27)を思わせる不気味な下宿ペンギン、フェザー・マッグロウという悪役、『サイコ』(60)を思わせる不気味な音楽に、のぞき見の構図など要所に影響を感じさせる。
その続編となった2024年の長編『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』では、前作で捕まった強盗ペンギンのフェザー・マッグロウがカムバック。ウォレスは発明したノーム型お手伝いロボット、ノーボットでひと儲けしようと試みるが、突如ノーボットが暴走。その裏には動物園に収容されているはずのフェザーが一枚噛んでおり…と再びフェザーがウォレスとグルミットに罪をなすりつけようとする復讐劇が繰り広げられる。
フェザーを動かさずにカメラを動かすことで恐ろしさを演出する際の照明は『レベッカ』(40)を参考にするなどヒッチコックの影響が感じられるが、そのほかにも多くの映画をオマージュ。刑務所内(動物園だが)でフェザーが懸垂をするシーンに象徴されるように、復讐という物語の枠組みは、いわばペンギン版『ケープ・フィアー』(91)といったところ。
さらにコンピューター画面に流れる緑色のコードがノーボットに映しだされるシーンは「マトリックス」シリーズ、ノーボットたちのアジトは『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(02)のオーク生産工場、椅子に腰掛けたフェザーがアザラシを撫でながら振り返るシーンは「007」のヴィランであるブロフェルド、船の上でバランスをとるアクションは『ミニミニ大作戦』(69)、その直後にグルミットが橋から落ちそうになるシーンは『ダイ・ハード』(88)…と枚挙に暇がない。
