有村架純の“お仕事現場”を密着レポート! 最新作『さとこはいつも』沖田修一監督と共に振り返る制作の裏側
「登場人物たちのことをすごく好きになるんです」(有村)
―― 有村さんは沖田監督と今回初めての仕事だと思いますが、オファーを受けた時の気持ちや、元々沖田監督へ持っていたイメージを教えてください。
有村「沖田監督の作品は以前から拝見していて、『キツツキと雨』や『横道世之介』、『さかなのこ』など、おもしろくて大好きでした。登場人物たちを魅力的によりよく映し出してくれている印象があって、みんなのことをすごく好きになるんです。沖田さんご自身は、心が非常に丸っこいというか…小さい頃に泥団子をピッカピカに磨くことにロマンを感じていそうな少年心や、好奇心をお持ちな方という印象があります。まさか自分が沖田組に参加できるとは思っていなかったので、すごくうれしかったです」
―― 実際に撮影が始まって、イメージとの違いはありましたか?
有村「沖田さんが持つあたたかさ、楽しむ気持ちが現場を前に進めてくれているのを感じます。監督自身がとても物腰柔らかく、現場を包み込んでくれるような雰囲気があるので、スタッフさんたちもとても和やかで、ピリピリした空気が一切ない。監督が毎日楽しんで現場に立っている空気がみんなに伝わっているのかなと思いました」
―― それは沖田監督流の演出方法の一つだったりもするのでしょうか?
有村「そうですね、クスクス笑いながらリハーサルを見てくださったりとか。それぞれのキャラクターについて『こういう風に演じてください』ということは一切おっしゃらないんですけど、自分たち俳優部が持ってくる考えや案を快く受け取って、楽しんでくださるんです。だからこちらもとても心地よく、テストの段階からいろんなことを試しながら、楽しんで表現していけたらいいなと思って参加していますね」
「宣伝の方々の、“言葉に対する敏感さ”や独特の世界観みたいなものがおもしろい」(沖田)
―― 沖田監督に伺います。本作はなにかを生み出すきっかけの話であり、3人の女性の話ですが、大元のアイデアはどこから生まれたのでしょうか?
沖田「昔すぎていろいろ忘れちゃったんですけど(笑)。物語を書こうとする女性の話をやりたいなと、ずっと模索していました。三世代の話にしたのは、高校生くらいの時に観た『ビフォア・ザ・レイン』という映画の影響です。映画のラストでまた冒頭に戻ったりして、脈絡があるようでない、みたいな構成がおもしろくて。それで、三世代なんだけれども一人の女性に見えてくるというのはどうだろう、と発想しました。そこに『昔書いて、どこかにいってしまった物語を探す』という、誰にでもありそうなモチーフを加えて映画にしたらどうかな、とイメージを膨らませていきました。プロデューサーの方に長い間話を聞いてもらって、やっとこの形になったので、こうして映画化できてよかったです」
―― 有村さん演じる沙都子を映画配給会社で働いている設定にした理由は?
沖田「言葉にまつわる話にはしたかったのですが、ライターだと、ちょっと直接的すぎるなと思って。周りで宣伝の方々の話を聞いたりするなかで、彼らの“言葉に対する敏感さ”や独特の世界観みたいなものがおもしろいと思ったんです。自分で映画の話をするのはどうかとも思ったんですが…近くてもまあいいや、と開き直って(笑)。自分が実際に会ったことのある人たちの話なので、それも魅力的だなと思いました」
「沙都子が成長し、新しいスタートラインに立つ物語」(有村)
―― 有村さんが沙都子という人物について観客に説明するとしたら、どういう女性ですか?
有村「私なりの解釈ですが、30代半ばでいわゆる中堅どころになり、責任も覚悟もしっかり持ちながら、仕事も難なくこなせるという年齢。社会人になりたてでがむしゃらに働いていた20代を経て、自分なりの回避術やマニュアルも身につけたことで落ち着きを得た一方で、『環境に慣れてきて、日常がなあなあになってきた』と感じる部分もあるんじゃないかと思います。
そんななか、6年続けている不倫が、自分にとって一つの新しい刺激になっていて。踏み込んではいけない扉を開けたら、仕事においてもなにか新しい景色が見えるかもしれない。そう思って踏み出した結果、ずるずると進んですべてが曖昧な状態になっている。今作は、そんな沙都子が心やプライドをポキッと折られるような出来事に出会うことで成長し、新しいスタートラインに立つ物語だと思っています」
―― 配給会社の宣伝部という内幕ものは、映画ファンも楽しく観られる題材だなと思いました。リサーチや役作りは、身の回りの人に聞いたり、実際にお会いした方をイメージしながら準備されたのでしょうか?
沖田「身近な宣伝の方に、台本を書くなかでわからないことがあったら『ちょっと悩んでいて…こういう時ってどうなんですか?』と聞いたりしました。だけど、人によって違ったりするので、半分くらい参考にしつつ(笑)。でも、“韓国ドラマ好き”とか、働いてる30代女性の“あるある”みたいなものはある気がして、そういう方の話を聞くと結構おもしろいなと思いました」
有村「沙都子の葛藤を掘り下げていきつつ 、短い物語の中で、 どれだけ説得力を持たせられるかはしっかり考えていました。宣伝の方々に関しては、仕事柄普段からお会いする機会も多いですし、取材日に朝イチで現場に入ると、宣伝部のみなさんが机を囲んでパソコンを前に会議をしているような姿も見てきました。取材初日には、『こういうことを宣伝文句として伝えていきたい。でもこのワードはまだ言わないでほしい』といった感じで、段取りをご説明いただいたうえで、取材を受けることがあって。その裏には綿密な会議や話し合いがあると思うので、その苦労や大変さをひしひしと感じながら演じています」
