『八つ墓村』清水崇監督が語る、アレンジされ続ける金田一「原作をそのまま作っても成立しない」

インタビュー

『八つ墓村』清水崇監督が語る、アレンジされ続ける金田一「原作をそのまま作っても成立しない」

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新たな観客が〈横溝正史〉と出逢うために

――清水監督が『八つ墓村』を知ったのはいつですか。

「おぼろげな印象があるのは、幼稚園か小1くらい。『8時だョ!全員集合』の舞台上のコントで、志村けんさんが『たたりじゃー!』って言いながら、加藤茶さんを追いかけ回していました。あれで映画を観ていない子どもたちにも浸透したんですよね。学校でも流行って。だいぶ後から、『たたりじゃー!』って言ってたのは、野村芳太郎監督のこの映画のことだったのかとわかったんです。僕は野村監督の『鬼畜』(78)が未だにトラウマなんです。『震える舌』(80)もそうですけど。いまもご健在なら絶対ホラーを撮ってますよ(笑)」

――今回の『八つ墓村』にオファーを受けた時点では、すでに方向性は固まっていたんですか。

「企画としては6年前ぐらいからあったらしいんですけど、どうしたものかという状態で。脚本は尾ヶ井慎太郎さんとプロデューサーで進めてくれていたのがあって。まず、その時点で出来上がっていたものを読んでくださいということでした。そこに僕の意見を反映してもらいつつ、最終的には僕がギリギリの時間のなかで悩み抜いて最終稿にリライトさせていただきました」

――とはいえ、市川崑監督の『犬神家の一族』(76)と野村版『八つ墓村』から、横溝映画というと大作のイメージがつきましたが、それ以前は短期間で作られたプログラムピクチャーとして作られていましたね。

「そうなんですよ。最初に片岡千恵蔵さんがやったシリーズは、金田一はスーツにハットで、美人のアシスタントを連れて拳銃を持っていたり、『007』みたいですからね」

――野村版以外の過去の作品はご覧になりましたか?

「片岡千恵蔵さんの金田一で『八つ墓村』(51)を作っていますが、フィルムが残っていないので観られませんでしたね。そういえば、最近やっと1時間ドラマでやったものを観たんですよ」

若い層にまず観てほしいと熱く語る清水監督
若い層にまず観てほしいと熱く語る清水監督撮影/木村篤史

――1969年にNET(現テレビ朝日)の「怪奇ロマン劇場」枠で放送された「八つ墓村」。金田一は医学博士という設定で金内吉男さんが、辰弥役は若き日の田村正和さんが演じています。

「あれはすごいですよね。観たのは撮った後だったんですが、ほか幾つかのテレビドラマ版より好きかもしれない。でも、どれを観ても『八つ墓村』は映像にするのが難しいと思いました」

第30回ファンタジア国際映画祭でワールドプレミアが行われた
第30回ファンタジア国際映画祭でワールドプレミアが行われた[c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――本作の初号試写には、横溝正史さんの娘である野本瑠美さんがお越しになっていましたね。上映後も監督にずっと話しかけられていました。

「そうなんですよ。父の世界観と僕のクリエイティブとが融合されてすばらしかったと言ってくださったので、担保をもらったわけではありませんが(笑)、うれしかったですね。その隣には野村芳太郎監督のご家族も。まさか初号試写に、横溝先生と野村監督のご遺族が来てくださるとは思わなかったので緊張しました。先日は、カナダの第30回ファンタジア国際映画祭に、アメリカ在住の横溝先生のお孫さんにあたる野本温さん夫妻が、車で何時間もかけてカナダまで来てくださって観てもらえたんですが、それもうれしかったです」

――エポックメイキングな『八つ墓村』が完成しましたが、観客にはどう受け止めてもらいたいですか。

「なにも知らない、あるいはタイトルしか知らないような若い層にまず観てほしいんですよ。ここを入口に興味を持ってもらって、原作へ立ち返ってもらうのもいいし、映画の野村版、市川版、テレビには稲垣吾郎さんが金田一を演ったものもあるし、そんなふうに興味を広げてもらえるとうれしいですね。一番手強いのは、原作や野村版を知っている層でしょうけど(笑)、今回自ら手掛けて『映画って、映画好き程、“思い出補正”する傾向も強いんだな』と感じたり…もしたので、なるべくフラットに新たな目線で観ていただけたら嬉しいです。あまり自分では自作にこういうことは言わないんですが、おもしろいと思うんですけどね。気に入ってもらえるとありがたいです」

『八つ墓村』は公開中!
『八つ墓村』は公開中![c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――シリーズ化を期待したいのですが、今回のテイストで『悪魔が来りて笛を吹く』をやるとかどうですか。

「いやぁ、どうだろう。『犬神家の一族』はもういいんじゃないっていう感じがしているので、僕は『悪魔の手毬唄』に興味がありますね」


取材・文/吉田伊知郎

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