『八つ墓村』清水崇監督が語る、アレンジされ続ける金田一「原作をそのまま作っても成立しない」

インタビュー

『八つ墓村』清水崇監督が語る、アレンジされ続ける金田一「原作をそのまま作っても成立しない」

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ミステリー界の巨匠・横溝正史の同名小説を、Jホラーの旗手として世界的に知られる清水崇監督が映画化した『八つ墓村』が9月18日より公開となった。2026年は金田一耕助の初登場から80周年というメモリアルイヤーでもあり、本作の金田一役は尾上松也が務めている。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、清水監督に直撃インタビューを敢行!横溝映画につきまとう〈市川崑の呪縛〉からも完全に解き放たれた、画期的な横溝映画リブートとして仕上がった本作の魅力をたっぷり語ってもらった。

内定ゼロ、彼女ナシ。大学生・井川辰弥(奥智哉)のもとに舞い込んだ母の訃報。奇妙な探偵・金田一耕助(尾上松也)に誘われ、岡山県山奥に潜む「八つ墓村」を訪れる。封印された、ルーツと怨念の記憶が目を覚ます。村では、名家・田治見家の莫大な遺産の相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように、不可解な連続殺人事件が発生。金田一耕助と共に、事件に巻き込まれてゆく。誰も知らない"八つ墓"の秘密がいま明かされる。

令和に『八つ墓村』を映画化

――誰も観たことがない『八つ墓村』になっていて驚きました。原作と野村芳太郎監督版『八つ墓村』(77)を踏まえつつ、清水監督にしか撮れない作品になっています。

「野村版の印象が強かったので、最初は自分が手を付けていいものかと思いました。いま、みんなが観たい『八つ墓村』ってなにか。プロデューサーや演出部にも相談しながらこれを入れようとか、それだといままでと同じになってしまうから嫌だとか話し合って作っていったんです。僕としては、いま、新たに作るならこれだろうという映画になった自信は持っています」

『八つ墓村』清水崇監督にインタビュー!
『八つ墓村』清水崇監督にインタビュー!撮影/木村篤史

――時代設定を原作の昭和23年(1948年)ではなく現代にしたのも、いまの映画にするための変更ですか。

「野村版でも、公開当時の現代にしていましたが、この令和に『八つ墓村』を撮ると考えると、原作の時代設定だと、お話も金田一のキャラクターも成り立たないと思ったんです」

――現代の話となると、インターネットをどう扱うかという問題も出てきますね。

「そうなんですよ。ネットを駆使してプロファイリングする金田一を見たいわけじゃない。でも、主人公の大学生・井川辰弥が自分の父である田治見要蔵(滝藤賢一)が起こした事件を検索する台本も1回書いたんです。辰弥が要蔵の事件を検索して『これが俺の父さんなのか』と」

――完成した映画では、ネット検索は使っていませんでした。

「20年ぐらい前に、村人を無差別に32人も殺していたら、検索すればすぐに出るじゃないですか。それで、32人という数字を劇中で言わないようにしました。殺しの数字にちなんだ殺人や謎解きもやめようと」

突然発狂し、村人を虐殺していく田治見要蔵
突然発狂し、村人を虐殺していく田治見要蔵[c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――それによって、殺人の順序や誰が殺されるかも原作と大きく変わっていきます。これまでの映像化作品を観ている人でも、次になにが起きるか予想がつきません。

「原作や野村版では、弁護士事務所で井川丑松という辰弥の母方の祖父が殺されるのが第1の殺人でした。次に死ぬのは、辰弥の義兄の田治見久弥だったんですよね。今回はそれを両方ともやめました」

――映画は、辰弥の母の井川鶴子(中島亜梨沙)の死から始まりますが、次に死を遂げるのは、久弥の主治医である久野医師(川瀬陽太)です。村で起きる最初の殺人ですね。

「久野医師は、村人に田治見家が元凶だと思わせる目印みたいな殺され方にしたかった。それで田治見家の屋敷の前で、晒し者のように、くの字に折って死ぬようにしたんです」


横溝映画のランドマーク・広兼邸

――田治見家の屋敷は、岡山県高梁市に現存する広兼邸で撮影されています。江戸時代後期に庄屋が建てた荘重な母屋と楼門は、村の権力者の住居に相応しい威容です。横溝映画では、野村版『八つ墓村』で初めて使用され、市川崑監督版『八つ墓村』(96)でも田治見家として登場しました。テレビドラマの横溝作品でも繰り返し使用されていて、ファンにはおなじみの建物です。

「広兼邸は使いたくなりますね。でも、『なんで田治見家は毎回広兼邸じゃなきゃダメなの?』っていう意見もあるので、いまならドローンも使えるから、これまでとは違った角度で見せられる。広兼邸の眺望のいい庭先に座った辰弥が、森美也子(堀田真由)と話をするシーンが僕は気に入っているんですが、あそこで怪異が起こるくだりがあったんです」

広兼邸も『八つ墓村』の魅力のひとつ
広兼邸も『八つ墓村』の魅力のひとつ[c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――どんな怪異が?

「落ち武者の尼子義孝が…。これは言わないほうがいいかな。撮影したもののカットしました(笑)」

――野村版では、広兼邸でのロケに加えて、鳥取県日野郡に広兼邸をそっくり再現したオープンセットを建てて、クライマックスの炎上シーンを撮影していましたね。

「あのセットはよく出来ていますね。何回観てもすごい。当時はCGがないから本当に燃やして。今回の『八つ墓村』は、炎上する広兼邸から始まるんですが、これはCGです。冒頭をどう始めるか、いろいろ意見はあったんですが、プロデューサーからの発案で、“誰だかわからない女の目に、田治見家の屋敷が燃えているのが見える。それは彼女にだけ見えている幻想で、それが未来なのか、過去なのかわからない”というのがあったんです。おもしろいと思って、そのアイデアを使わせてもらいました」

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