清水崇監督『八つ墓村』がカナダの映画祭でワールドプレミア!Q&Aで明かされた、“いま映画化する意義”とは?
これまで幾度も映像化されてきた日本ミステリー界の巨匠・横溝正史の同名ベストセラー小説を、「呪怨」シリーズや「恐怖の村」シリーズの清水崇監督が完全新作として映画化した『八つ墓村』(9月18日公開)。現在カナダのモントリオールで開催中の第30回ファンタジア国際映画祭で、清水監督への生涯功労賞授賞式と、本作のワールドプレミア上映が行われ、それぞれ大きな喝采に包まれた。
“北米最大のジャンル映画祭”として知られるファンタジア国際映画祭で、日本人が生涯功労賞(Cheval Noir Career Achievement Award)を受賞するのは4人目の快挙。その授賞式が現地時間7月26日に行われ、総立ちの観客から歓声を浴びながら登壇した清水監督は、トロフィーを受け取ると「言葉にならないくらいうれしいです。映画祭30周年おめでとうございます。そんな記念すべきタイミングに、こんなにうれしい場を設けていただき感謝いたします」と感謝のスピーチ。
「僕のフランス語がどこまで通じているかわからないですが、通訳に時間がかかることをお許しください」とジョークを交えて会場を和ませ、「子どものころは怖がりで、14歳のころまでホラー映画を観るのは“変わった人たち”だと思っていました。15歳のころに『死霊のはらわた』を観て“こんな作品をつくる監督はろくなもんじゃない、とても悪い大人に違いない”と思っていましたが、そんなサム・ライミ監督から35歳の時に『アメリカで映画を作らないか』とチャンスをもらいました」と振り返る。
そして「人生なにが起こるかわからないとは言いますが、こうして映画を撮り続けて、こんなに喜ばしいことが起こると、明日にでも殺されるんじゃないかと不安になったりもします(笑)。もう少しだけ撮りたい映画もあるので、まだ生かしておいてください」とユーモアたっぷりに喜びを語り、会場は割れんばかりの爆笑に包まれていた。
授賞式から2日後の現地時間7月28日には、『八つ墓村』が世界初お披露目。平日の夜の上映にもかかわらず会場前には長蛇の列ができ、チケットは完売。約800人の観客の前に登場した清水監督は「小説自体も横溝正史先生も、金田一という探偵のキャラクターも、すべてにおいて有名でファンが多い作品。変なアレンジをしたら横溝先生のファンから叱られるんじゃないかと思いながらオファーを引き受けました」と告白。
さらに「原作関係者がこの作品をご覧になることには非常に緊張しましたが、いまこの作品を映画化するならば、自分が監督をさせてもらうならば、という想いでいろいろと挑戦させていただきました」と語り、「横溝正史さんの次女の野本瑠美さんが初号試写で映画をご覧になり、絶賛してくださったのでまずは少し安心しました」と明かした。
上映後に行われたQ&Aでは、岡山で行われたロケーション撮影の苦労や、前作『口に関するアンケート』(公開中)でも印象的に使われていた“木”へのこだわりについて訊かれ「特にこだわっているわけではないのですが、双子杉は原作に少し違うかたちで登場するものかヒントを得ています」と回答するなど、熱心な観客からの質問に時折ユーモアを交えながら答えていく清水監督。
時代設定を現代に変更した意図を訊かれると「私自身、野村芳太郎監督版が大好きですが、いまこの時代に映画化するにあたり、まずは過去の作品や原作を知らない若い世代に観てほしいと思いました」と明かした上で、設定変更によって金田一のキャラクターの本質が変わってしまわないよう慎重にバランスをとることに留意したと説明。
そして「SNSで顔や名前を隠したまま他人を攻撃する現代社会の現象は、劇中で面を被り正体を隠して殺しを行なったり、辰弥を追い詰めるため田治見家を集団で襲撃したりする村人たちの姿と重ねて描くことができる。これこそ、いま描くべきだと確信したことも理由の一つです」と語り、Q&Aはここで惜しくもタイムオーバー。会場は終始熱狂に包まれたまま、ワールドプレミアは大盛況のうちに幕を閉じた。
文/久保田 和馬
