衰え知らずの88歳!リドリー・スコットが『ラスト・サバイバー』で見せたエンタメ魂と“原作クラッシャー”の真骨頂

衰え知らずの88歳!リドリー・スコットが『ラスト・サバイバー』で見せたエンタメ魂と“原作クラッシャー”の真骨頂

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リドリー・スコットならではの圧巻の“美と映像”で終末世界を表現

リドリー・スコットらしいディストピアの風景
リドリー・スコットらしいディストピアの風景[c]2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

人間が生み出す暴力と狂気、そして信仰。モンスターやゾンビは一切登場せず、リアルな人間同士のサバイバル戦に徹しているというのは近年、厭世的な作品、人間嫌い度が高くなったスコットらしいチョイスともいえる。そしてもうひとつ、スコット作品で忘れてはいけない要素がある。“美と映像”だ。ヒッグが物資調達のためセスナを駆って定期的に訪れる廃墟となった街。ビルボードが剥げ落ち、アスファルトに広がった裂け目からは雑草が顔を出し、スーパーマーケットには分厚い埃をかぶった商品が並ぶ。誰もいないこの空間で、ソーラーシステムを使っているのだろうか、街頭ビジョンはいまだに映像を送り出している。日本人的には「兵どもの夢の跡」という俳句の一節が浮かんでしまう終末の風景。この物悲しさは原作と重なる部分だが、映像になったことでダイレクトに世界観、終末観が伝わって来る。

飛行シーンの美しさは圧巻!
飛行シーンの美しさは圧巻![c]2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

その一方で、ヒッグのセスナは緑の山々の間を気持ちよく飛んで行く。人間の手が触れていない自然の美しさ!その浮遊感!「詩的」な部分はこの緑に集約されていると言ってもいい。

主人公がパイロットだからこそ描ける空から俯瞰した終末の世界。かつて人間の文明があった場所は朽ち果てた廃墟にもかかわらず、眼下に広がる大自然はその緑が勢いを増し、私たちに“絶景”を見せてくれる。ここでも対照的な終末の風景を切り取っているのだ。

【写真を見る】『ラスト・サバイバー』ロンドンプレミアに登壇したリドリー・スコットとパートナーで俳優のジャンニーナ・ファシオ
【写真を見る】『ラスト・サバイバー』ロンドンプレミアに登壇したリドリー・スコットとパートナーで俳優のジャンニーナ・ファシオ[c]2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

というわけでつまり、リドリー・スコットは原作クラッシャーだったわけなのだが、考えてみればフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とその映画化、スコットの名前を不動にした『ブレードランナー』もかなりの原作クラッシャーぶりではあった。どんな小説、原作であっても自分のスタイルに変換できる自信と力があるからこそなのだろう。そういう意味ではやはり、「らしい」選択をしていると言っていい。

スコットの次回作はスティーブンソンの海洋冒険小説の傑作「宝島」だという。これでもまたクラッシャーぶりを発揮しつつ、しっかりエンタテインメントしてくれるはず。生涯映画監督のすばらしい心意気だと思う。


文/渡辺麻紀

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