ネタバレなしで「スパイダーマン」最新作をレビュー!「大いなる力には大いなる責任が伴う」の“責任”にはピーター・パーカー自身の幸せも含まれていた…!
トム・ホランド演じるスパイダーマンの最新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が公開!世界を救うために、すべての人の記憶から自分の存在を忘れられるという究極の選択をしたピーター・パーカーの新たな奮闘を描きだす。本稿では、アメコミ評論家として最新アメコミ情報の発信や映画パンフレットなどへの寄稿、さらに東京コミコンのステージディレクターも務め、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本語吹替版の監修も手掛ける杉山すぴ豊による、ネタバレなしのレビューをお届けする。
サム・ライミ監督による名作『スパイダーマン2』を彷彿とさせる展開!
正直『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)の後に新たなスパイダーマン映画を作るというのは大変だったと思います。というのも『ノー・ウェイ・ホーム』は歴代スパイダーマンが集結するという超イベント映画でした。これを超える興奮を提供できるのか?そしてMJやネッドとの別れという衝撃をどう引き継ぐのか…?
しかしそれは杞憂に終わりました。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は嬉しくなるようなスパイダーマン映画の快作に仕上がりました。歴代スパイダーマン映画はどれも好きですが、個人的にはそのなかでも上位に来るぐらいの傑作だと思います。
トム・ホランド版のスパイダーマンはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中でお話が展開します。従ってスパイダーマンはほかにもヒーローたちがいる世界でのルーキー的立ち位置でした。特にアイアンマン/トニー・スタークが彼の師匠的な位置づけです。1作目の『スパイダーマン:ホームカミング』(17)はトニー・スタークも出てくるからなおさらその傾向が強い。そして2作目の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)ではある意味その師匠が残した負の遺産を彼が後始末する話です。『ノー・ウェイ・ホーム』ではようやくトニー・スターク色から脱しますが、別バースのスパイダーマンたちが兄貴のように現れます。繰り返しになりますが、先輩ヒーローたちがいるなかでトム・ホランドのスパイダーマンは弟的に奮闘します。
これはもともとMCUでスパイダーマンを立ち上げる時に、ケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオの社長でMCUの仕掛人であるプロデューサー)が言っていましたが、「スパイダーマンはほかのヒーローと絡ませるとおもしろい」という視点から来ているものだと思います。その楽しさは確かにずっと味わせてくれました。ただこのやり方は、いつまで経ってもトム・ホランドのスパイダーマンがヒーロー界の小僧なんですね。
それが今回の『ブランド・ニュー・デイ』ではようやくそのポジションから脱却しました。従って過去作以上にトム・ホランド演じるスパイダーマン/ピーター・パーカーの物語にフォーカスしているんです。個人的には歴代スパイダーマンの中で僕が最も好きな『スパイダーマン2』(04)に似ています。この作品では、ピーターとしての悩みがスパイダーマンとしての機能に影響するとか、果たして自分はスパイダーマンなのか?ピーターなのか?というアイデンティティの問題が描かれドラマに深みを与えていましたが、この『ブランド・ニュー・デイ』も同じようなことが起こります。
