『オークストリートの異変』公開前に知りたい!夢のような奇妙な世界を紡ぐ鬼才、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督とは
夢のような世界観、水、通過儀礼…ミッチェル作品の共通点を探る
「常にチャレンジしたい。すべてのジャンルに対して作りたい映画のアイデアがある」と語るように、青春、ホラー、ノワールと、作品ごとに異なるジャンルの映画を作り、観る者に新鮮な驚きを与えてきたミッチェル監督。内容はガラッと異なるが、たしかに同じ作り手だということがわかるような独特の雰囲気がどの作品にも漂っている。
共通して感じられるのは「夢のような幻想的な手触り」。海外の掲示板サイト「Reddit」に本人が降臨した際、「映画は夢のようなもの」と元も子もないことを言ったが、『イット・フォローズ』が子どもの頃の悪夢から着想を得たように、ミッチェル監督の作品はどれも浮世離れしている。
例えば『アメリカン・スリープオーバー』と『イット・フォローズ』で描かれるのは、ほとんど大人が出てこない子どもだけの世界。また『アンダー・ザ・シルバーレイク』でも働いている様子はないのに、気にせず過ごしていたりと日常生活的なリアリティが意図的に薄められている。
さらにほとんどの作品で携帯電話を登場させない一方、『イット・フォローズ』に貝殻型の電子書籍リーダーを登場させたりと、小道具などの細部に違和感を織り混ぜることで時代感を排除。少し現実を歪ませた世界を作り上げているのだ。
また水やプールが繰り返し登場するのもミッチェル作品の特徴の一つ。「水が動く様子や波の音が大好き。特別な感覚を生みだし、別世界へと連れて行ってくれる。観客になにかを示唆したり伝えたりするうえで非常に役立つ」と語るように、水面の反射や揺らぎ、音を印象的に用いることで、登場人物の感情の機微を静かに浮かび上がらせている。
そのうえ、偶然かはたまた意図的か、作品ごとに子どもから大人への成長がだんだんと積み重ねられている。子ども時代を描いた『アメリカン・スリープオーバー』では青春のきらめきと迫り来る終わりの予感、そして大学生が主人公の『イット・フォローズ』では、若者たちがセックスや理不尽といった人生との直面を経験する。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』が描くのも、大物になりたいという漠然とした夢を抱えながらも燻り続けている青年が陰謀論に現実逃避しながら少しばかり成長する――大人としての責務を果たせないモラトリアム期だ。このような通過儀礼的な側面もミッチェル印と言えるだろう。
