ファンも気づかない?宮舘涼太が『黒牢城』で見せた自然体すぎる主従関係と探偵&助手の関係性
荒木村重に付き従う忠臣、乾助三郎を自然体で好演
それだけに、『黒牢城』の宮舘には驚かされる。なにしろ、村重に忠義を尽くす家臣の乾助三郎に扮した彼には、『火喰鳥を、喰う』のインパクトも美しいダンスでオーディエンスを魅了する輝きも感じさせないから。村重に付き従う忠臣という役柄に真摯に向き合い、信頼のおける誠実な受け答えと適度な距離感で体現。その自然な立ち振る舞いが逆に新鮮だったりもするし、ぼんやり観ていたら、宮舘が助三郎を演じていることに気づかないかもしれない。
主君と事件を検分する姿がまるでホームズとワトソン
その自然な主従関係が特に印象的なのが、信長に寝返った家臣を父に持つ少年、自念(槙木悠人)が矢で射られて殺害された第1の事件。現場は密室状態にあった一室であり、「天誅が下ったのだ」と騒ぎ立てる者もいるなか、自念がどのような方法で殺害されたのかを村重と助三郎が検分する。しかし、どこにも凶器の矢は残されておらず、屋内で矢を放とうとすれば天井や床に長弓が当たってしまうし、雪が積もった庭を挟んだ通路から狙おうにも灯籠が邪魔をして確実に標的を射抜くのは極めて困難に思われる。
村重の指示で事件当時を再現するため、自念に見立てた俵を部屋に置き、障子をわずか数センチほど開けた状態にする助三郎。さらに、放った矢を回収する手段の仮説として、矢に結んだ糸を離れた通路から引っ張ってみるのだが、「このやり方だとやはり雪の上で跡がつきまする」とすぐさま報告する。一連の彼の言動には無駄がないし、のちに官兵衛が詠んだ狂歌を口ずさむ主君の姿を見て、かつて戦場でまともに戦おうとしない荒木勢を揶揄して陣中に流れた戯れ歌「あら木弓はりまのかたへおしよせて いるもいられず引もひかれず」を言葉にして思いがけずヒントを与えるなど、その表情や空気感で助三郎の勘が鋭いことを観る者に伝えるのだからさすがだ。
このように様々な殺人方法を検討しながら事件の謎に迫っていく村重と助三郎のやり取りは、さながらかの名探偵シャーロック・ホームズと相棒の医師ジョン・H・ワトソンのようであり、どこか微笑ましくてほっこりする。
それは、『羊たちの沈黙』(91)におけるFBIの女性訓練生クラリスと元精神科医の殺人鬼レクター博士を想起させる、村重と官兵衛の関係性とは異なるもの。漂う空気も明らかに違うその2つのシークエンスを観比べながら、映画『黒牢城』に仕掛られた謎に挑んでみるのもおもしろいだろう。宮舘涼太のさりげない芝居が、本作の秘密を解くカギになるかもしれないから。
文/イソガイマサト
