映画ファンの“ツボ”が満載!元ネタがわかるとより愉しい『モータルコンバット/ネクストラウンド』の映画パロディ
カール・アーバンがやっているからこその爆笑!
同じニューライン・シネマのネタでいうと、「ロード・オブ・ザ・リング」系が充実している。このスタジオはピーター・ジャクソンと組んでJ・R・R・トールキンの「指輪物語」を原作通り三部作で作ることを前もって決め、ファンタジー映画のスタンダードを変えてしまったことで知られている。普通なら1作目をまずつくり、それがヒットしたら2作目をつくるというスタイルのところを、最初から3部作を撮影して1年おきに公開し大成功を収めた。ただし、その後にもう1本、フィリップ・プルマン原作の『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(07)というファンタジーをつくったが、これは興行的に大失敗。結果、ワーナー・ブラザースに買収されて、傘下のレーベルになった。
さて、その「~リング」ネタでいうならケイジが、今回の争奪戦の標的になっている不死の護符の破壊方法についてカノウ(ジョシュ・ローソン)と言い争うシーン。「裏に説明があるのか」なんていうカノウのジョークにつられ、護符をひっくり返したケイジは「ひとつの指輪ですべてを支配する…」と書かれてもいない文章を朗読する。これには大爆笑だが、演じているのがアーバンというのも無視できない。
彼は「~リング」シリーズの『二つの塔』(02)、『王の帰還』(03)で、ローハン王セオデンの甥エオメルを演じてブレイクしたからだ。結局、この護符はケイジが敵と共に破壊するのだが、その図はちょっと指輪の末路に似てないこともない。『王の帰還』ではフロドは指輪を捨てられず、ゴラムが奪って炎の中に落ちて行くからだ。
同じく「~リング」ネタでいうと、今回も登場したカノウはライデンのことを前作同様「ガンダルフ」と呼んでいる。確かに、世界を救うため“旅の仲間”を集めたガンダルフのようにライデンは、人間界存続のために闘ってくれる戦士を集めるのだがら言いえて妙な呼び方だ。また彼は、白塗りのネクロマンサー(クァン・チー)のことを「ペニーワイズ」と呼んだり「ヴォルデモード」と呼んだり、映画ネタをぶち込んでくる。言うまでもなくペニーワイズは「IT/イット」シリーズの邪悪ピエロで、ヴォルデモードは「ハリー・ポッター」シリーズの“名前を言ってはいけないあの人”のこと。「IT」はニューライン製作でワーナーの配給、「ハリー・ポッター」はワーナー映画だ。白塗りでいうと、ケイジたちが魔界に忍び込む時に出会う凶暴な種族タルカタン族も白塗りなせいか、ノリは「マッドマックス」。これもワーナー作品だ。
昨今のハリウッド事情まで深読み!?
やはりというか当然というべきか、引用映画のほとんどはワーナー作品とその傘下のニューライン。唯一違っていたのは、両腕がロボット義手になっているジャクソン・ブリックス(メカッド・ブルックス)に対して、字幕では「ロボット・アーム」としているが、英語では「トランスフォーマー・アーム」になっていた。「トランスフォーマー」シリーズはパラマウントの映画だが、ワーナーがパラマウント・スカイダンスに吸収される予定なことを考えての流用だったりするのだろうか。
ということは、なんと!昨今のハリウッド事情まで深読みできる『モータルコンバット/ネクストラウンド』…というのはかなり邪推なのだが、これらの映画ネタが本作では、次から次へと繰りだされるバトルの緩衝材になっているところが大きなポイント。血みどろのアクションの連続に笑いは(ほぼ)ないが、映画のギャグ使いでちゃんと笑いを取っているという構成になっている。だから、ゲームに関しては無知であっても、しっかり楽しめてしまったわけなのだ。
監督たちは、そうやることで観客の間口を広げようとしたのだろうか。あるいは単に自分たちの趣味なのか。その辺の真相はわからないものの、映画の愉しみ方は人それぞれということを証明してくれたと思います!
文/渡辺麻紀
