第4回日本ホラー映画大賞、大賞は山城研二監督『chorus(コーラス)』に!清水崇監督は「悔しさはバネにしてこそ」とエール
第4回を迎えた「日本ホラー映画大賞」の授賞式が5月30日にグランドシネマサンシャイン池袋で行われ、大賞並びに各賞が発表された。大賞には、山城研二監督の『chorus(コーラス)』が輝いた。
株式会社KADOKAWAと株式会社KeyHolderが共催する「日本ホラー映画大賞」は、新しいホラー映像作家の発掘・支援を目指す、“ホラー”ジャンルに絞った一般公募による日本初のフィルムコンペティション。大賞授賞者には商業映画監督デビューが確約され、第1回大賞受賞の下津優太監督は『みなに幸あれ』(24)、第2回大賞受賞の近藤亮太監督は『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(25)で商業映画監督デビューを果たし、第3回大賞受賞の片桐絵梨子監督は2027年に『夏の午後、おるすばんをしているの』で商業映画監督デビューが控えるなど、ホラー界隈での注目と存在感が年々高まっている。
第4回を迎えた今回は、今年2月から一般公募を開始。大賞並びに各賞の最終選考は、選考委員長の清水崇監督、選考委員として俳優の堀未央奈、映像クリエイター・監督・声優のFROGMAN、Base Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正、コメディアンのゆりやんレトリィバァ(リモート参加)、作家の道尾秀介が行った。
大賞を獲得したのは、山城研二監督の『chorus(コーラス)』。プレゼンターを務めた清水監督は「正直、悩みました」と告白。「選考委員のなかでも“私はこれが好き”、“これも落とすのはどうかな”と喧々諤々があった」と意見を戦わせたそうで、そのなかでも同作に「これは」という輝きがあったとコメント。さらに「山城監督は、普段は映画やドラマなど商業ベースで助監督をされているそうで。現場で助監督の仕事もしながらという方は、初かもしれない。珍しい」と思いを巡らせつつ、「僕も映画やドラマで助監督をしながら、監督を目指した。こういう方が出てくるのもうれしい。純粋に作品を絞りこんだら、この作品になりました」と語った。
「スタッフ、キャストの皆さんがいなかったら、獲れていない」と感謝した山城監督は、「昨年は、“第4回、ないのかな”と発表をずっと待っていた。年末に、“やるっぽいよ”という話を聞いて。正月に実家で脚本を書いて、2月に撮った。クランクインの前日くらいまで脚本を直していました。皆さんの意見を取り入れていい作品になったと思っています」とお礼を重ねながら、「今日は沖縄から、母とおばが観に来てくれたので。見せられてよかったなと思っています」と会場の家族に笑顔を向け、大きな拍手を浴びていた。
将来性を感じさせる作品に送られる、選考委員特別賞を受賞したのは、澁谷桂一監督の『ゴボゴボギュギュ』。「タイトル、変ですよね」と目尻を下げた清水監督は、「このタイトルにやられたというのもある。内容を見始めても、狐につままれたような展開。“闇バイトなの?なんなの?”と思いながら引き込まれていく感じがある」とこれまでの澁谷監督の応募作を振り返ってみても、引き込み方がうまいと評価。「世界的に見てもそうなんですが、ホラー映画の幅が広がっていっている。ホラー映画大賞で、ホラー映画の幅を広げる一因を担ってくれているのが澁谷監督。今後も、警戒しながら見続けていきたい監督。おめでとうございます」と賛辞を送った。
澁谷監督は「びっくりです」と驚きながら、「前回も選考委員特別賞だった。ずっと将来を期待され続けている」と苦笑い。「本音を言えば、悔しさはあります。でも選考委員特別賞を2回連続で獲るのもなかなかないんじゃないかと。そういったおいしさ、話題みたいなものがあったらいいなとい思っています。映画をやることしか興味がないので、また映画を作ります」と力強く宣言していた。
そして金内健樹監督による『誰かと誰かと』が、MOVIE WALKER PRESSのホラー特化ブランドからの視点で、映画ファンに広く愛される作品に送られるPRESS HORROR賞に決定した。PRESS HORRORディレクターの水野裕基は、第3回の同賞に金内監督が応募した作品も印象的だったといい、「今回も2人の会話をずっと見ていたいなと思わせるような、不思議な魅力を持った作品。見終わった後にせつなさや、物悲しさが残るファンタジックな映画に仕上がっていた」と称賛。「今後もご活躍をお祈りしております」と激励した。「自分のまわりにはすぐれた映画作家、アーティストが多い」と切り出した金内監督は、「特にホラーにすぐれた作家が多い。ホラー映画大賞を目指して、僕はちゃんと映画を撮り始めた。第3回の応募時には、一部でご好評をいただいたり、清水監督やゆりやんさんから厳しい言葉もいただいた。それが励みになった」と回顧。今回、すばらしい作品群に名を連ねることができたのは「私の人生においても、こんなにめでたいことはない」と感慨を口にしていた。
総評として、清水監督は「個人的には第3回までにあったような、ドン!というもの。“観たことない、こんなの!”というのは、正直なかったと思っています。ですが、今後も期待したい。僕もゆりやんも悔しがるくらいなものを作ってほしい」と期待を込めて叱咤激励。「悔しさはバネにしてこそ。僕もそういう想いを散々してきているし、いまでもたまにするくらいです。それはなくしてはいけないものだと思っています。動かないとなにも見えてこないし、周りも動いてくれなくなる。動き続けて、作り続けてもらえたらと思います」と応援のメッセージを寄せた。
「私は“うわ!”という衝撃を求めて日々生きているんですが、4回目として“もう少しほしかったな”というのが正直なところです。清水監督と同じ気持ちです。それはこれから(同賞を)続いていくにあたっても、求めているものです」と続いた堀は、「ホラーだけではなくて、人間同士のストーリーや背景の日本独特な怖さなど、すごく繊細に描かれていた。プラスして、新しいスパイスみたいなもの。常識を壊していくようなものが作られていくと、私の人生も救われるのかなと思います」とより衝撃がほしいと希望していた。同賞の積み重ねや成熟度に想いを馳せた小出は、「それと同時に、受賞作品の傾向と対策みたいなものも、ある程度、蓄積されてきているのかなと。商業デビューしようという気持ちで、作品を送ってきてくださる方が多いのかなと感じています。その分、商業デビューをイメージしやすい作品が増えた。見応えがあった」と力を込めていた。
FROGMANは、選考過程において「すごく悩みました」と吐露。大賞受賞後には「商業映画として監督作品を撮らなければいけないことが前提だとすると、ある程度、そういった作品に取り組めるだろうなと想像させられる監督じゃないと厳しいのかなと思うこともある。でも情熱もあって、可能性もある作家さんもたくさんいる」と模索しながら、「ホラー映画大賞って、今後はどういう基準で選んでいけばいいのかなと。技術がインフレして、プロの方も投稿してくる。今後、どういうスタンスで選んでいけばいいのかという、課題も感じた。とにかくレベルが上がってしまって、悩みました」と率直な想いを語った。
「数年前に比べたら、世の中でホラーは流行っている」と分析した宇野は、「ホラーが流行っていて、日本ホラー映画大賞もこれまでに確実に功績を残している。そんななか、この物足りなさはなんだろうと考えます」とストレートにコメント。「この賞は応募期間というか、季節が決まっていない。いつを目指して映画を作っていいか、わからない」と運営体制について指摘しながら、「日本ホラー映画大賞はすばらしい賞だと思います。ホラー映画は流行っています。だとしたら、なにかを変えていかなければいけないんだろうなと、いち審査員、いち映画ジャーナリストとして思っています」と真摯な見解を示した。「初めて選考委員に参加させていただいた」という道尾は、「とても楽しく選考させていただいた。すごく好きで推したい作品があったら、“全力で推そう”と思って見始めた。そうしたら半分ちょっとくらいが、好きな作品だった。こんなにクオリティが高いのかと思った」としみじみ。小説家としても刺激を受けたとしつつ、「来年も楽しみにしています」と笑顔を浮かべていた。
ゆりやんは「いままでは映画好きのお笑い芸人として参加していましたが、『禍禍女』で映画監督デビューをして。ホラー映画監督として審査員に参加させてもらうのは、大変緊張しました」と、新たな緊張感があった様子。「同時に監督を体験させていただいてから、皆さんの映画を観させてもらったら新たな感動、新たな視点があった。尊敬の眼差しで作品を観させていただいた」と感激しきり。「人間の数だけ、脳みその数だけ、怖さの表現や方向性があるんだな、おもしろく観させてもらいました」と実りの多い時間になったという。また登壇者でトークを繰り広げるなかでは、「不条理系のものや、最後まで答えを出さずに、わけのわからない世界に引きずり込むという系統が増えている」と傾向を紐解いた清水監督。「どんなホラーでも受け止めるつもり」(清水)、「自由度を高くやってほしいですね」(堀)と熱望。清水監督は「楽しい作品、すばらしい作品を生んでいける場として、ずっと続いていってくれたらなと思う。続けていくためには、応募してくれたり、観に来てくれたりする人たちの力が必要」と観客にも呼びかけ、授賞式を締めくくった。
【第4回日本ホラー映画大賞 受賞結果】
大賞:『chorus(コーラス)』山城研二監督
選考委員特別賞:『ゴボゴボギュギュ』澁谷桂一監督
ニューホープ賞:『ヒバリ:序章』田中弘誠監督
株式会社闇賞:『きしむ椅子』宮本亮監督
シネマンション賞:『現身(うつしみ)』三重野広帆監督
PRESS HORROR賞:『誰かと誰かと』金内健樹監督
豆魚雷賞:『人殺し』早田優太監督
シネマサンシャイン賞:『きしむ椅子』宮本亮監督
ギークピクチュアズ賞:『現身(うつしみ)』三重野広帆監督
取材・文/成田おり枝

