“現代のジェーン・オースティン”セリーヌ・ソン監督×ダコタ・ジョンソンが『マテリアリスト 結婚の条件』を通して見つめる、大人の三角関係

“現代のジェーン・オースティン”セリーヌ・ソン監督×ダコタ・ジョンソンが『マテリアリスト 結婚の条件』を通して見つめる、大人の三角関係

マテリアリスト 結婚の条件』(公開中)は、『パスト ライブス/再会』(23)で世界を魅了したセリーヌ・ソン監督が、ニューヨークの婚活市場を舞台に描く新たな傑作ラブストーリーだ。ニューヨークの結婚相談所で凄腕マッチメーカーとして働くルーシー(ダコタ・ジョンソン)は、クライアントの恋を成就させながら、自分自身はひたすら仕事に打ち込む“マテリアリスト(物質主義者)”。好条件が揃い、婚活市場に現れた“ユニコーン”のようなハリー(ペドロ・パスカル)と付き合い始めたルーシーだが、偶然の再会を果たした夢を追い続ける元カレのジョン(クリス・エヴァンス)のことも、依然として気になっている。身長、収入、学歴…スペックを数値化し、最高の条件を持つパートナーを探し出すプロフェッショナルが、最後に選ぶ愛とは?ソン監督らしさが光る、大人の男女の三角関係は今作でも健在だ。

※本記事は、『マテリアリスト 結婚の条件』のネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。

「『パスト ライブス/再会』を作ったから、次はそれを踏まえて、なんてことには絶対にならない」(ソン監督)

前作『パスト ライブス/再会』がアカデミー賞の作品賞、脚本賞にノミネートされたセリーヌ・ソン監督(写真中央)
前作『パスト ライブス/再会』がアカデミー賞の作品賞、脚本賞にノミネートされたセリーヌ・ソン監督(写真中央)Copyright 2025 [c] Adore Rights LLC. All Rights Reserved

この映画のインスピレーションを尋ねられたソン監督は、まずジェーン・オースティンの名を挙げた。「彼女の作品はすべて、ひとりの女性がどのように決断を下し、自らの人生における選択をするかを描いています。彼女の作品にはいつも、現実的なものと本当の愛というものが根底にあって、最終的には自分の心に従う、という部分があります。それは普遍的なものだと思っています。『高慢と偏見』がファンタジーとしてすばらしいのは、生涯愛すると決めた相手が、実際的・経済的な問題もすべて解決してくれる存在でもある、という点ですよね。現代においては、その両方をひとりの人間に求めることがますます難しくなっている。そのことがずっと頭にありました」

脚本の出発点は、もっと個人的な体験だった。ソン監督は、かつて劇作家として食べていけなかった時代に、約6か月間マッチメーカーとして働いた経験があるという。家賃を払うための“副業”として始めたその仕事が、やがて数年越しのプロジェクトになった。「マッチメーカーを辞めた時、いつかこれについてなにか書こうと感じていて、それから約10年試行錯誤して、ようやくこの映画を作ることができました」

ソン監督自身の、マッチメーカーとして働いた経験から本作の物語は生まれた
ソン監督自身の、マッチメーカーとして働いた経験から本作の物語は生まれたCopyright 2025 [c] Adore Rights LLC. All Rights Reserved

その10年間、脚本に向き合う際にソン監督が大切にし続けた概念がある。韓国語で「초심(チョシム)」、つまり日本語でいうところの“初心忘るべからず”だ。「創作活動の場では、『初めての心に戻れ』とよく言われます。前作(『パスト ライブス/再会』)を作ったから、次はそれを踏まえて、なんてことには絶対にならない。常に初めての心から始まるんです。だからこそオリジナルのストーリーであり、オリジナルの脚本であり、ダコタが加わるまでルーシーは存在しなかった。“ルーシー”は、ページの上の言葉でしかなかったんです。だから、多くのことは映画の中で生まれなければならないし、映画の中で発明されなければならないと思います」

ジョンソンが演じるルーシーは、ウィットに富み、仕事においては鋭くスマートに立ち回れるのに、自分自身の恋愛に関しては悩みが絶えない女性。ジョンソンはルーシーのキャラクター造形において、ノーラ・エフロン作品やビリー・ワイルダー、ジェームズ・L・ブルックスの映画を参照しつつ、なにより身近にいるパブリシストなど対人業務で働く女性たちからインスピレーションを得たそうだ。


ルーシーは、ニューヨークの結婚相談所で働く凄腕マッチメーカー
ルーシーは、ニューヨークの結婚相談所で働く凄腕マッチメーカーCopyright 2025 [c] Adore Rights LLC. All Rights Reserved

「ニューヨークで生きている、神経質で頭がよく、てきぱきと働く女性たちのことを思い浮かべていました」とソン監督も語る。「そんな女性に合う仕事はなんだろう?と考えた時、クライアントと向き合う仕事の場に多くの働く女性がいる、という答えに行き着きました。エージェント、マネージャー、パブリシスト…誰もが共感できる設定だと思います」

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