染谷将太、衝撃作『廃用身』公開に緊張「ドキドキしています」 吉田光希監督は念願の映画化に涙
現役医師作家による衝撃作を染谷将太主演で映画化した『廃用身』の公開記念舞台挨拶が5月16日にTOHOシネマズ 日比谷で行われ、染谷将太、北村有起哉、六平直政、中井友望、久坂部羊(原作者)、吉田光希監督が登壇した。
原作は、外務省医務官を経て、在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた久坂部自身の経験から生まれた小説デビュー作「廃用身」。“廃用身”とは、麻痺などにより、回復見込みがない手足のことを表す。クリニックの院長である漆原(染谷)が、介護負担の軽減を目的に、老人の“不要な手足”を切り落とすという従来の価値観を揺るがす治療法「Aケア」を提唱。身体の一部をまるで“廃棄物”のように切断された患者たちは晴れやかな表情を浮かべていくが、ある出来事をきっかけに状況が一変していく。
映像化不可能とも言われた小説を映画化した、衝撃作。原作者の久坂部が「まさか映像化されるとは思わず書いていた。映像を観て驚きましたが、心から満足しています」と完成作に最大の賛辞を送るなか、主人公の医師、漆原を演じた染谷は「いつも作品が公開される時は、うれしさと旅立っていく寂しさがある。でも『廃用身』は言葉にできないような、いい意味である種の緊張感が漂う。ドキドキしています」と挑戦的な作品を送り出す心境を吐露し、「賛否両論、カラフルな感想が飛び交ってくれたらうれしい」と願いを込めた。
吉田監督が原作と出会ったのは、「大学生のころ」だという。「いつか映画にできたらなと思っていました。ただの夢物語で…」と念願だったこと打ち明けると、「すみません」とうつむいて思わず涙をこぼした。
染谷が「控室で“僕、急に泣いちゃうと思います”と言っていた。有言実行でしたね」と場を和ませるように語ると、吉田監督は「こんなにたくさんに見守っていただき、お披露目できて、本当にうれしく思っています」と声を絞り出した。隣にいた久坂部も「監督に感極まっていただいて。書き手としては、最高の読者です。感動しています」と胸を熱くしつつ、小説を映像化する企画は途中でストップすることもあることから、「『廃用身』は映像化しにくい作品だと思っていた。たぶん企画も潰れるだろうと思っていた。監督とプロデューサーがしつこく続けてくださって、2年前に撮影が始まって。“本当に映画化されるんや”と思った」としみじみ。「作り事の部分もありますが、現場に根ざしたものを書いた。怖いくらいリアルです」と本作に注がれたリアリティについて語った。
染谷は、飛び込むには「勇気のいる役」だと告白しながらも、オファーを受けて台本が届いた段階で制作陣の並々ならぬ熱量を感じたと話す。「台本が、いまでは珍しく製本された状態で届いて。すごく熱量を感じた」と明かし、「メールで“よろしくお願いします”と送るのではなく、監督に面と向かってお伝えしたくて。握手をして“頑張りましょう”と言った日を思い出しました」としみじみと振り返っていた。
漆原に本の出版を持ちかける編集者、矢倉役の北村も「賛否が分かれるような映画だと思う」とコメント。「どう受け止めてくれるのか、非常に楽しみです」と笑顔を浮かべた。両脚と左腕の麻痺に苦しめられ、漆原の画期的な治療で人生を取り戻す岩上役の六平は「とにかく全シーン、大変だった」と壮絶な役になったと語り、「私が演じたのは、患者側。患者側の行動、気持ちは、患者の役の人にしかわからない。皆さんにも、受け身の恐ろしさを感じていただければ」とそれぞれの立場を感じてほしいと呼びかけた。
漆原院長のもとで働く看護師を演じた中井は、司会を務めたジャガモンド斉藤から「憧れの染谷さんとの共演だった」と明かされる場面もあり、「こんなところでバラされるとは思っていなかった。ご本人にもお伝えしたことがない」と苦笑い。「撮影が終わって、寝る前とかに“今日、染谷さんと一緒にお芝居をしていたんだ”と思い返したりして。しみじみと感動していました」と当時の感激を振り返った。染谷は「恐縮です」と照れ笑いを見せていた。
最後に染谷は「自分は、観たこともないような映画だなと思いました」と完成作を観た率直な想いを口にし、「医療、介護、人として、映画としての倫理観も問われるような映画。たくさん思うことがある映画だと思います。この衝撃を少しでも多くの方に広めていただけたら」とメッセージ。「失礼しました。回復しました」と涙の釈明をした吉田監督は、「この作品は、気持ちよく観られない部分もたくさんある映画だと思っています。観終わって、“好きだった”“嫌いだった”など、そんな気持ちも全部この映画の一部になっていくと思います。観終わった皆さんが、議論を交わせるような映画を作りたいと思っていました」と改めて本作に込めた想いを語り、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝
※吉田光希監督の「吉」は「つちよし」が正式表記
