「ホラーじゃないのにどんなホラーよりも怖い…」「自分ならどうする?」賛否両論の問題作『廃用身』、その“衝撃の正体”を、鑑賞直後の観客たちの生の声からひも解く
「観なければならないと思わせるものがあった」現場を知る観客も賞賛するリアリティ
今回の試写会に参加した観客は10代から60代までの幅広い世代の男女約100名。「現実的な側面もありつつ、どこか他人事のように俯瞰で見ている自分が怖かった」(10代・女性)というコメントもあるように、“介護”は10代や20代の若い世代にとってはまだそれほど身近なものではない。しかし年齢が上がるにつれて、親の介護を経験したという声や、自身の将来について憂慮する声が目立つようになり、それぞれが“自分ごと”として捉えていたことが窺える。
「怖すぎる…。老いていくことが避けられない自分の親、自分も含めて未来が怖くなった」(40代・男性)
「日本の日常(どの家庭にもある介護)の延長のなかの出来事に感じられ、自分ごと、身近に感じた」(30代・女性)
「自分も同じ立場になったら、同じようにしてしまうのではないかと怖くなった」(40代・男性)
「昨年まで義母を介護していたので、あまりのリアルさに恐ろしい気持ちが非常に大きいです」(50代・女性)
「自分や家族の未来にあるかもしれない状況で、いざ自分に起こったらどのような決断をするのか、考えさせられた」(40代・女性)
実際に介護や医療の現場で働いている観客からは、患者やその家族が抱える悩みを的確に描いているといった旨のコメントも。また、これからそうした職に就こうと考えている人や、介護の当事者になるかもしれない人など、本作をきっかけに現状の課題に真摯に向き合う覚悟をあらためて持ったという声も多く見られた。
「理学療法を学んできた身として、本人・家族・医療従事者の思いや葛藤がとても理解できるし、現場の難しさを感じました」(20代・男性)
「老年に対する医療とはなにか、考えさせられた。いま医療の勉強をしているなかで、終末期医療により興味を持った」(20代・女性)
「目を背けたくなる内容だが、観なければならないと思わせるものだった」(20代・男性)
このように、フィクションのできごととして考えるだけでなく、介護する側になるか介護される側になるのかを問わず、自身の未来に置き換えて深く考えるきっかけを与えてくれる本作。 「『自分ならどうするか?』という重い問いを突きつけられるので、見終わった後に誰かと語り合いたくなりました」(50代・男性)という感想にもあるように、観終わった後に身近な人と議論を交わしてみるというのも本作の味わいかたの一つなのかもしれない。
今回のMOVIE WALKER PRESS試写会では、上映終了後に原作者の久坂部と、メガホンをとった吉田光希監督によるトークショーも行われた。そのなかで久坂部は、自身が医師として多くの患者とその家族に向き合った体験から本作が生まれたことを明かし、大学時代に原作小説と出会った吉田監督は、その時に受けた衝撃について振り返っている。
観客からは「この映画が始動する起点や、実話と近しいものもあったと知ることができ、より本作が現実の延長線上のように思えた」(10代・女性)や 「一種の答え合わせのようで考えをまとめながら、興味深く感じています。より深く作品に入り込めます」(30代・男性)という感想も。映画の鑑賞後にレポート記事をチェックすれば、本作をより深く理解することができるはずだ。
「SNSで簡単にエコーチェンバーに陥ってしまうこの時代だからこそ、決して偏ることのない、そして自分自身の深淵にも囚われないようにするためより多くの人に観てほしい作品だと思います」(30代・男性)
「生きるということはどういうことなんだろうかと、改めて問われた気がします。この答えはずっと考えていかなければならないと思います」(40代・男性)
「この先を生きることが少し怖くなってしまいました。でもだからこそ、いまを精一杯生きていかないといけないと思いました」(40代・男性)
と、現実と地続きのテーマから、様々な側面から「生きること」そのものについて深く向き合わせてくれる映画『廃用身』。是非とも劇場で、その衝撃をしっかりと受け止めてほしい。
文/久保田 和馬
※吉田光希監督の「吉」は「つちよし」が正式表記
