「ホラーじゃないのにどんなホラーよりも怖い…」「自分ならどうする?」賛否両論の問題作『廃用身』、その“衝撃の正体”を、鑑賞直後の観客たちの生の声からひも解く
染谷将太演じる漆原に、賛否両論が巻き起こる!
賛否両論うずまく本作で、特に観客を二分したのが主人公の漆原が“善人”なのか“悪人”なのかという解釈である。介護が患者本人にとってもその家族にとっても大きな負担になっているなか、コスパの良い介護を目指して“Aケア”を考案する漆原。医療の限界を超えたいと強く訴え、自身の思い描く理想を追い求めるあまり危うい領域へと踏み込んでしまう人物として描かれている。
「老人のために次々と手足を切断し、なにも感じていない様子が怖かった」(40代・女性)
「本人は善意として、患者のその後を想像できていないのに怖さを感じた」(30代・男性)
「医者として善良であるが、完璧主義者で利己的。自分の思う通りに支配できる力もあり、そのことに無自覚であるがゆえに自分のなかにあった悪意と向き合うと途端に崩れてしまう弱い人間」(30代・男性)
「過剰な前向きさと、自分の過去にした行いを忘れているところが自分の正しさを過信していると思った」(20代・女性)
「自分のAケアに対する絶対的自信。瞳の奥に狂気が見えた」(30代・女性)
このように“漆原否定派”の声で目立ったのは、「怖さ」や「狂気」という言葉。一方で、「決して悪魔ではなく、患者とその家族を考えての行動であり、応援したくなる医師」(50代・男性)や「もっと深く彼のことを知りたくなりました。好きです、自分は…」(30代・女性)などのように全面的に賛同する声は少ない。大多数を占めていたのは、 「漆原の考えは一理あると思いつつ、いきすぎたところもあるのかも…」(40代・女性)のように、「ある程度の理解はできるが…」と善悪決めかねるという評価だ。
「患者想いであることに嘘はないように思えた」(40代・女性)
「漆原の説得力に思わず唸ってしまい、これ本当にやってみるのありなのでは?と思ってしまった自分にちょっとゾッとしています」(20代・男性)
「患者想いなことは間違いなかったです。その手法が正しいのか、というだけで」(30代・男性)
「善人と悪人の2種類に単純に分類することは難しいと思いますが、漆原はどっちだったのだろうとずっと考えてしまいます」(20代・女性)
冷徹なように見えて、決して完璧ではない人間くさい一面ものぞかせる漆原。ホラーやサイコスリラーでよく見られるようなマッドサイエンティストとは異なる複雑なキャラクターだからこそ、作品全体を通して描かれるテーマを含めて多くの議論を後押ししているのであろう。もちろん、独特の空気感でこの漆原を演じ抜いた染谷の演技にも賞賛の声が多数寄せられていた。
「染谷将太の演技によって、その曖昧さがより際立っていた」(30代・男性)
「淡々としつつも説得力のある、染谷将太さんのお芝居に引き込まれました」(40代・男性)
「漆原役が染谷将太で良かったと思いました。むしろ染谷さんじゃないとあの漆原はなかったのかと思います」(40代・女性)
そんな漆原の人間性をよく表したシーンといえるのが、映画の中盤、漆原が考案した“Aケア”で人生を取り戻したはずの患者、岩上武一(六平直政)が起こしたある事件だ。事件を知った漆原は、矢倉にこう話す。「やりたいことをできるようになったという意味では、Aケアの効果があったと思うんです」。
映画の大きなターニングポイントともいえるこの一連に、衝撃を受ける観客が続出したことは言うまでもないだろう。「六平さんの演技が圧倒的でした」(20代・女性)という岩上役を演じた名バイプレイヤー六平の迫真の演技への賞賛と共に、このシーンについても様々な声が寄せられていた。
「ショッキングな展開があるが、決して現実離れしたことでもないだろうと思った」(50代・男性)
「幸せになれたと思っていたのですが、考える余力、体力があることが幸せにつながるわけではないと思い知らされた。思考が戻ることは、幸せだけではなく負の面も同時に戻ってくるリスクがあると思った」(30代・女性)
「悲しみより怒りより、これで解放されるんだという安堵の気持ちに胸が締め付けられました」(30代・女性)
