『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』のポジティブ少女イ・レ「愛と慰め、連帯といったテーマが込められている作品です」
イ・レが映画に込めたメッセージ「競争よりももっと大切な価値がある」
韓国は世界でも有数の超学歴社会だとされているが、それは熾烈な競争社会が影響している。ソラ先生がオーディションによる選抜メンバーだけを舞台に立たせようとする展開や、母親の過剰な期待に応えようと気負ってしまう学生たちの姿、プレッシャーと対立を越えて連帯し合うイニョンたちを通じて、『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』は競うだけの社会が一度立ち止まるためのヒントをくれる。
「競争社会というのは、韓国に限らずどこにでもあるものだと思います。本作は単に競争の構図を描くよりも、『本当に大切な価値とは何か』を問いかける物語で、愛と慰め、そして連帯といったテーマが込められていることを、誇らしく思っています。それに、この作品では、誰かが悪意を抱いて人を傷つけたりしないですよね。人と人が親しくなって、お互いに慰め合い、時にぶつかり合いながら関係を築いていく姿を見た観客の方々に、『私もああいう日常を送りたい』と思っていただけたらうれしいです」。
去る3月12日、イ・レは20歳という節目の年齢を迎えた。彼女の子役時代からの演技を知る韓国映画ファンにとって、『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』は少女から成長していくイ・レのリアルに重なって見えて、目を細めたことだろう。長い芸能生活のなかで、自身にも変化があったようだ。
「昨年、大人の役に初めて挑戦して、撮影現場で立派な俳優としているためには、もう自分に甘えるべきではないと感じました。まだまだ未熟な部分があるので、一歩一歩さらに努力していかなければならないと決心しました」。
性被害から回復していこうとする『ソウォン 願い』(13)。大人たちをあっと言わせる奇想天外な計画を思いつく『犬どろぼう完全計画』(15)。荒廃した半島を舞台に華麗なドライビングテクニックを披露する『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)。イ・レが演じてきた少女はある時は懸命で、ある時はユニークで、それでいてどれもとびきり愛らしく、スクリーンのなかで力強く存在していた。『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』では、少女から大人へと変わるさなかのイニョンを演じ、ベストアクトを後進した。そんなイ・レは、これから挑戦していきたい作品に時代劇を挙げる。幼い頃からジャンル作品への出演が多かった彼女は、未経験の世界観や出来事を演じる際、自身とは大きく異なるシチュエーションやキャラクターのなかにも、共通する部分を見つけようと努めてきたという。その積み重ねが、今回の名演に繋がっている。
イ・レをロールモデルとして、背中を追い芸能界に入る子役俳優たちも多いはず。そう問いを投げかけると、「子役俳優たちのロールモデルかもしれないとおっしゃっていただき、とても励みになり、感謝の気持ちでいっぱいです。ただ同時に、責任の重さも感じています」と表情を引き締めた。
「とにかく、恥ずかしくない先輩になりたいです。俳優を夢見ているその子たちが、同じ夢を見て私という俳優を通り過ぎていくだけでも本当に貴重な経験です。私自身にも尊敬する憧れの先輩たちはたくさんいるんですが、それよりもまずは自分自身にもっと集中しようと努力しています。誰かを真似するのではなく、台本を自分なりに掘り下げ、イメージを作り出すというよりも、自分の中にあるものを少しずつ積み重ねていきたいと思っています。誠実に、真実と向き合いながら演じること。それが幼い頃から今も追求し続けていることです」。
取材・文/荒井 南

