『禍禍女』ゆりやんレトリィバァ監督と南沙良が撮影を通して築いた絆「一緒にいいものを作りたいという想いで臨んだ、転機にもなった作品」
「(撮影中は)ゆりやんさんが実際にやって見せてくださって、『これよりおもしろくなるかな?』って言われるんです」(南)
――監督のOKがなかなか出なかったシーンもありますか?
南「苦戦したのは、瑠美の悪口や自分の妄想を宏に向かってまくしたてるシーンです。でも、わりと序盤に撮影したので、早苗のベースのテンションを探ることができて。あそこがあったから、後半の狂気的なシーンもやりやすくなりました」
ゆりやん監督「あのシーン、海外の人たちは全員引いてました(笑)」
南「(爆笑)」
ゆりやん監督「最初のうちは『アッハッハ』って笑っていたのに、だんだん『言い過ぎやろ!』みたいな空気になって。でも、最終的には爆笑になったので、ありがたかったです」
――ゆりやんさんは『ミスミソウ』(11)や『許された子どもたち』(20)などの内藤瑛亮監督が脚本に書いたセリフを絶賛されてましたね。
ゆりやん監督「はい。内藤さん自身はほんまに優しくて、ご家族を大切にされているし、娘さんにも愛を注がれているんですけど、そんな方がなぜこんなおぞましいセリフを書けるんだろう?と思って(笑)。そのギャップも含めて大好きです」
――おふたりがいちばん印象に残っているセリフは?
ゆりやん監督「『脳みそツルツルの××××は…』とか『××された××みたいな顔して!』っていうところは、なぜ、そんなことが言えるの?って思いました(笑)」
南「私もそのふたつはすごく印象に残ってます。『ああ、これを言うんだ?』と思って。でも、言ってみたら意外と気分がよくて、なんだか、すっきりはしましたね(笑)」
ゆりやん監督「へ~すっきりしてたんや!(笑)」
――南さんは先ほど「ミュージカルシーンが大変だった」って言われましたけど、カメラに向かって笑顔で「好き」「好き」って何度も言うあの一連は、ほかでは見たことのない南さんの表情が見られて新鮮でした。
南「ミュージカルシーンは気持ちをあのテンションまで持っていくのも大変でしたけど、普段ああいう表現をしないので、どうしたら気持ち悪く見えるのか、なかなかつかめなくて。『もうちょっと顔を気持ち悪くしたい』という、ゆりやんさんの細かい指示を受けながら進めていきました」
ゆりやん監督「だけど、言葉ではうまく説明できないから……」
南「実際にやって見せてくださって、『これよりおもしろくなるかな?』って言われるんですよ!」
ゆりやん監督「言ってました、言ってました(笑)。でも、南さんはやっぱりそれを上回ってきましたね」
南「鏡を見ながら『こんな感じかな?こんな感じかな?』って表情をいろいろ研究して臨みましたからね(笑)」
「私の想いをお芝居を超えたもので見せてくれていたので本当にありがたかった」(ゆりやん監督)
――撮影現場のゆりやん監督は絶対妥協しない厳しい方なのか、優しい方なのか?どんな感じでした?
南「熱量がやっぱりスゴい方だから、私はすごく助かりました。ほかの皆さんも全員、ゆりやんさんの熱量に引っ張られて、『この作品を絶対にいいものにしたい』という強い想いで取り組まれていたけれど、それもすべて、ゆりやんさんのおかげです」
――詳細は書けないものの、クライマックスで早苗は大変なことになってしまいますが…あのシーンの撮影ではベトベトになって気持ち悪くなかったですか?
南「もちろん気持ち悪かったですよ!(笑)。でも、ゆりやんさんから『儀式みたいにしたい』と伺っていたので、清らかな気持ちであの中に入っていきました」
ゆりやん監督「あれは、好きな人がもう絶対に手に入らなくなってしまった状況を満足させる行為でもあるんです。なので、清らかな気持ちで自分を満足させているという見え方にしたかったんですよ」
――南さんは先ほど「自分の殻をここまで破ることになるとは思ってなかった」と言われましたが、この役を実際にやられて気づいたり、知らなかった自分を発見したりもしました?
南「まさかここまでのことをやるとは思ってなかったけれど、『あっ、私、こんな表情ができるんだ?こんな表現ができるんだ?』という発見があったので、心からやってよかったです。それに、早苗ほどでは全然ないんですが、彼女を理解していこうとする作業のなかで、私もわりと人や物に執着しているなってことに改めて気づきました」
ゆりやん監督「南さんは皆さんも知っているように可愛らしい素敵な方ですけど、それだけじゃないんですよね。『禍禍女』のインタビューなのであえてこういう表現をしますけど、心の奥底に“闇”を抱えていて、それを『可愛い、可愛い、元気、元気だけじゃ世の中生きていけない』というエネルギーに変えて出してくれるんです。それは、ほかの人には出し得ないものですよ。今回、撮影で1か月まるまる一緒にいたし、そこから編集が始まり、完成までの半年間は早苗を演じている南沙良さんの映像をずっと観ていたんです。でも、しばらく時間が経って、海外の映画祭などでフラットな気持ちで作品を観たら、南沙良さんとしてではなく、早苗にちゃんと見えたから改めてスゴい!と思って。『私のワケのわからないオーダーや演出をこんな風に表現してくれたんだ!』という驚きがあったし、私の想いを世界中の人たちに伝わる、お芝居を超えたもので見せてくれていたので本当にありがたかったです」
南「ありがとうございます」

