【ネタバレなし】YouTuberナオキマン、陰謀論者の暴走を描く『ブゴニア』を徹底レビュー!「おもしろかったとしか言いようがない」

【ネタバレなし】YouTuberナオキマン、陰謀論者の暴走を描く『ブゴニア』を徹底レビュー!「おもしろかったとしか言いようがない」

「エマ・ストーンは、なんなら本当に宇宙人に似てる気すらしてくる」

ミシェルとテディたちによる、まったく嚙み合わない会話劇がおもしろい
ミシェルとテディたちによる、まったく嚙み合わない会話劇がおもしろい[c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

映画のストーリーの軸は、“ぶっ飛んだ思考を持つ陰謀論者”VS“誘拐という緊急事態を正論で説き伏せようとする切れ者CEO”の対決だが、「エマ・ストーンの瞳って、すごく大きくて綺麗じゃないですか。人間離れしていて、なんなら本当にちょっと宇宙人に似てる気すらしてくるからおもしろい」とナオキマン。たしかにこの奇想天外な映画において、丸刈りという衝撃のビジュアルに、全身白いクリームを塗りたくっているエマ・ストーンはめっちゃ宇宙人っぽい。完全同意の相槌を打つ編集A。

そして、物語全体に散りばめられたブラックユーモアも魅力のひとつだが、本作におけるコメディ的なおもしろさはどこにあるのだろう?これもやはり、リアリティに根差したところにある、とナオキマンは語る。「最初に笑ったのは、テディと相棒のドンが、ミシェルの誘拐に成功してメチャクチャ喜んでるところなんですよ。この人たちは本当に純粋で、自分たちの信じていることをやり遂げて、心底喜んでいるんだなあと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました」。編集Aも該当シーンを思い返してみたが、おっさん2人が抱き合って少年のように飛び跳ねて喜んでいた。これは最初に語っていた陰謀論者に見られる「純粋さ」に通じているようだ。

「ミシェルの頭髪を剃るところは、腑に落ちました」

テディとドンが独自の宇宙人対策を取っているのも劇中で笑えるポイントだが、これは陰謀論界隈の現実と照らし合わせて、どこまでがリアルなのか?世界中から集められた宇宙陰謀論に触れてきたナオキマンに、この映画における“陰謀論あるある”があるのか?を訊いてみた!

「宇宙船との交信を阻害するため」として、長い髪を丸坊主にされてしまった!
「宇宙船との交信を阻害するため」として、長い髪を丸坊主にされてしまった![c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

劇中では、テディ自身のリサーチに基づいた、いくつかの“宇宙人識別マニュアル”を披露するのだが(いわく、足の幅が狭いこと、耳の形、歯の配置…)、編集Aが「これは…陰謀業界では通説とされていることなんでしょうか?」と興味津々にナオキマンに訊いてみると、「ほぼヨーロッパ人のすべてに当てはまるじゃないですか!」と笑いとばされ、拍子抜け。しかし、納得するポイントもあると教えてくれた。

「テディが髪の毛を宇宙人の発信機だと信じてミシェルの頭髪を剃るところは、腑に落ちました。女性は髪の長い人が多いし、勘が鋭いともいわれていますよね。また、ネイティブアメリカンの方も長髪で、彼らの間では髪に霊性が宿ると言われています。そういうところから、このエピソードは取ってきてるんじゃないかなあ。あと、UFOに探知されないようにアルミホイルを家中に貼るシーンもありましたが、あれは有名な説ですね」。
たしかに、アルミホイル帽子の描写は、宇宙人陰謀論映画のなかでも有名なM・ナイト・シャマラン監督作『サイン』(02)でも登場した!「じゃあテディたちが実践していたほかの対策も、実は都市伝説的に信じられているものだったりしますか?」と続けると…。
「いや、それ以外の部分は思い込みが激しすぎますね(笑)。ミシェルの全身にクリームを塗って能力を封じるとか、これは陰謀論界隈の現実としてはピンとこないですね。まあ、だからこそおかしかったし、強引な論に持っていくのも陰謀論者の特徴ですからね」。うーん、やはり、テディの主張はあまりに奇想天外なものだったようだ。

【写真を見る】ナオキマンが『ブゴニア』に見た、“陰謀論あるある”なシーンとは?
【写真を見る】ナオキマンが『ブゴニア』に見た、“陰謀論あるある”なシーンとは?[c]2025 FOCUS FEATURES LLC.

また、富裕層のミシェルと、貧困層のテディという対照的なキャラクター配置も見逃せない。貧困層が陰謀論に頼りがちな傾向にある一方で、富裕層の常人には思いつかない思考回路が宇宙人のように思える瞬間は、確かにある…と思う編集A。ネットを見ると、誰もが知っている政治家やセレブリティの宇宙人説は、まことしやかに囁かれもしている。「貧困層は自分がキツい暮らしをしている理由を陰謀論に求めがちなんです。なにかのせいにしたい。じゃあ富裕層はというと、一般人の発想を超えた部分で生きているんです。イーロン・マスクは、常人とは異なる発想の持ち主ですが、宇宙人なんじゃないか!?とは普通決めつけないですよね(笑)。テディとミシェルのリアリティは、そういう部分にも見えますね」。

「“陰謀は貧乏”。陰謀論にはまると、生き方というか考え方が貧乏になる」

自身の経験をもとに、「“陰謀は貧乏”」と表現したナオキマン
自身の経験をもとに、「“陰謀は貧乏”」と表現したナオキマン撮影/興梠真穂

「ナオキマンさんが、陰謀論と出会ったきかっけはなんだったんですか?」。唐突に尋ねた編集A。いまでこそエンタテインメントとしての陰謀論を発信しているナオキマンだが、彼自身も陰謀論にハマったことで、精神的に落ち込んだ経験があるそうだ。「大学生のころ陰謀論にハマって。戦争などのグロテスクな画像も出てきて、どんどんメンタルをやられてしまったんです。なにも信じられなくなるし、それこそテディたちのように添加物が入ってることなど気にしてお菓子も食べられない」。
しかし、陰謀論を理由にすべてを拒絶するようになると、あらゆる人生の可能性が閉ざされてしまう。「僕は“陰謀は貧乏”っていうんです。陰謀論にはまると、生き方というか考え方が貧乏になる。そこを打開することがすべてだと思うんです」。なんという名言…果たして、テディたちは「打開する」ことができるのか…?は、ぜひ映画館で確かめてみてほしい!

本稿ではネタバレなしで、本作の魅力について解説したが、これだけでも『ブゴニア』がトンでもなく胸をザワつかせる作品であることがわかっていただけただろう。とはいえ、映画を観終えると、鑑賞前とはまったく別種のものが宿ることになる。次回のネタバレあり編では、その部分に踏み込んで、ナオキマンに語っていただく。こうご期待!


取材・文/相馬学

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