スコット・デリクソン監督が『ブラックフォン 2』で目指した、エモーショナルな恐怖「ジャンルを変える、多感的な成長物語に」

スコット・デリクソン監督が『ブラックフォン 2』で目指した、エモーショナルな恐怖「ジャンルを変える、多感的な成長物語に」

「映画を効果的に怖くする要素は、登場人物への感情移入」

フィニーとグウェンの兄妹はもちろん、本作を語るうえで欠かせないのはグラバー役のイーサン・ホークだ。デリクソン監督にとっては『フッテージ』(12)と前作に続き、今回が3度目のタッグとなる。「脚本を渡した時に、彼は『とても緊張している。実は続編というものにコミットするのは初めてなんだ』と言ったんです。『ビフォア』シリーズがあるじゃないかと返したら、『あれは自分で脚本を書いていたからカウントされないんだ』と(笑)」。

15年かけて映画化に漕ぎつけた前作に続き、脚本・監督・製作を務めたスコット・デリクソン監督
15年かけて映画化に漕ぎつけた前作に続き、脚本・監督・製作を務めたスコット・デリクソン監督[c]2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

前作のクライマックス、フィニーと死闘を繰り広げた末に葬られたグラバー。今作では彼が“死者”となって再びフィニーとグウェンの前に立ちはだかる。「イーサンがこの映画にもたらしたのは、流麗さと知性、そしてごく限られた俳優にしか表現できない言葉の鋭さだ」と、デリクソン監督は盟友の卓越した演技に賞賛の言葉を送る。

「今作のなかに、グラバーが黒いバンの荷台で大きな鳥のように不気味に佇み、グウェンを相手に地獄について語る場面がある。あのセリフは、もし選択を間違ったら非常にチープなものになりかねないけど、撮影中に思わず感嘆して『すばらしい…!』と言ったことをおぼえています。イーサンもモニターで確認しながら、『こんなセリフを言える機会は滅多にない』と言っていた。彼はこの亡霊のような殺人鬼に、洗練された独自性と深淵、そして生々しさを与えている。生と死の両方で、グラバーの持つ脅威や空虚さ、壊れた心と卑劣さを見事に表現してくれたのです」。

【写真を見る】「映画館で観ないと…」Super8フィルムとデジタルの融合で、1980年代の空気を再現!
【写真を見る】「映画館で観ないと…」Super8フィルムとデジタルの融合で、1980年代の空気を再現![c]2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

ストーリーやキャラクター造形に加え、映像の質感からサウンドデザインといった細部にまでこだわりを注いだと明かすデリクソン監督は、「映画館で観ないと、この作品が持つ感覚的な力を充分に味わうことはできない」と断言。「“映画を効果的に怖くする要素”は、登場人物への感情移入。次は誰に何が起こるのかを気にかけると、自分自身も怖くなる。この作品には感情移入できるキャラクターが登場し、彼らは過酷な状況に置かれる。だから観客は、別の時間や場所に引き込まれるような体験をすることになるでしょう」と、緻密かつ多層的に作りあげられた映画体験が味わえることをアピール。

そして、「観客を怖がらせ、恐怖を疑似体験させたいということを考えているが、それだけではありません。そこに共感や愛、痛み、悲しみといったエモーショナルな要素も伴っていて、それらがこの作品の大きなタペストリーを形成しているのです。私の考えでは、“癒やし”こそが、この映画に関わるすべてのキャラクターの感情的な物語や心理描写を構築する中核になっています」。

『ブラックフォン 2』は現在公開中!
『ブラックフォン 2』は現在公開中![c]2025 Universal Studios. All Rights Reserved.


構成・文/久保田 和馬

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