標高4250mの塩湖に豪華絢爛な宮殿、世界遺産、巨大井戸まで…『落下の王国』の映像美を実現したインドの名所をたどる
最も偉大な統治者の墓廟、湖の中に建つ宮殿ホテル、インドを代表する世界遺産
●大帝の威厳を感じさせる壮大な墓、アクバル廟
霊者と出会った当初、5人の勇者は得体の知れないこの男を仲間にすべきではないとしていた。しかし、総督オウディアスに捕まった黒山賊の弟、青山賊を救うべく、宮殿に到着したところで、5人は数多の兵をたった一人で全滅させた霊者の姿を目撃する。折り重なって倒れる黒い兵たちの山の上に立ち、悠然と両腕を上げて勝利を示す霊者と共に映しだされるのが、ウッタル・プラデーシュ州の都市アーグラ郊外のシカンドラにあるアクバル廟の南門だ。アクバル廟はムガル帝国史上最も偉大な統治者とされる大帝アクバルの墓廟。壁一面に施された白大理石と色石の象嵌細工の華麗な装飾にも目を奪われる。
●湖上に浮かぶ宮殿ホテル、タージ・レイク・パレス
仲間が6人となり、総督オウディアスとの決戦を控える勇者たちは、白亜の大理石の建物を一時的な拠点とする。この建物がラージャスターン州の都市ウダイプルのピチョーラー湖の小島に建つタージ・レイク・パレスだ。もともとは1746年にメーワール王国の君主ジャガット・シン2世が避暑のために建てたジャグニワース宮殿で、のちにウダイプル初の高級宮殿ホテルとして改装された。劇中では、美しい景観が見渡せるパレスの屋上で、黒山賊とオウディアスの婚約者だったエヴリン姫(ジャスティン・ワデル)が対峙。やがて惹かれ合っていく2人にぴったりのロマンティックな場所となった。
●白大理石の廟堂、インドが誇る世界遺産タージ・マハル
愛してしまった姫が、皮肉なことに最も憎む仇敵、総督オウディアスの婚約者だと知った黒山賊は、仲間たちが見守るなか、泣く泣く姫を処刑しようとする。このシーンの背景に映るのは、インド・イスラム文化を象徴する世界遺産のタージ・マハル。ウッタル・プラデーシュ州の都市アーグラに、ムガル王朝第5代シャー・ジャハーン帝が、1631年に死去した愛妃ムムターズ・マハルの墓廟として建てた建築物である。総大理石で造られたドームやアーチの柔らかな曲線による優美な印象と気高い姿が、死を前にしても毅然とした態度を見せる姫のキャラクターと重なる。ヤムナー川の水面に映り込む白く儚いタージもまた美しい。
●豪華絢爛な空間が広がるウメイド・バワン・パレス
愛を確かめ合った黒山賊と姫が結婚式を挙げるシーンは、ラージャスターン州の都市ジョードプルのウメイド・バワン・パレスの館内で撮影された。アールデコ様式の端正で豪華な内装の美しさと、中央にいる登場人物たちを囲んで、白い長衣を纏った人々がクルクルと旋回しながらスーフィーダンスを踊る様が神秘的で独特な雰囲気を醸しだしている。
かつてのジョードプル王家の宮殿を改装したウメイド・バワン・パレスは、現在も元マハラジャの一族が暮らし、その一部がホテルとなっている。大理石が使用された堂々たる建物の外観や広大な庭園、プールなどは、本作の終盤に登場する総督オウディアスの私邸のロケ地にもなっている。オウディアスの権力がいかに強大かを、有無を言わさぬ説得力で表現した。
また、丘の上に建つウメイド・バワン・パレスから見下ろせる、ジョードプル旧市街のブルーに染まった町並み自体も観光名所の一つ。この地ではもともと、古くから家屋の壁を青く塗る慣習があり、“ブルーシティ”と呼ばれていた。スクリーン上でより目立たせるためターセム監督は、町の住民全員に青い塗料をプレゼント。住民たちが家に青色のペンキを塗ってくれたことで、呼び名通りの色鮮やかな町並みを印象づけている。
