倍賞千恵子&木村拓哉、山田洋次監督91作目『TOKYOタクシー』で見せた“挑戦”と“素顔”「2人でお芝居ができて本当によかった」

倍賞千恵子&木村拓哉、山田洋次監督91作目『TOKYOタクシー』で見せた“挑戦”と“素顔”「2人でお芝居ができて本当によかった」

山田洋次監督の91本目の最新作『TOKYOタクシー』(11月21日公開)で、『ハウルの動く城』(04)以来となる共演を果たした倍賞千恵子木村拓哉。タクシー運転手とそこへ乗り込んだマダムの交流を描く本作で、人生のほろ苦さと、そのなかでふいに訪れる出会いの奇跡を体現。彼らの旅路をいつまでも見ていたくなるような、温かな余韻をスクリーンに刻み込んでいる。山田監督から求められたのは、「挑戦」(倍賞)。そして、「素顔」(木村)。山田監督のもとでさらなる新境地を開いた彼らが、監督のエネルギーに満ちあふれた撮影現場の様子や、歳を重ねることや出会いの尊さなど、穏やかな笑顔いっぱいに語り合った。

「木村くんとの共演に、緊張しました」(倍賞)

マダムとタクシー運転手の“たった1日の旅”を描く『TOKYOタクシー』
マダムとタクシー運転手の“たった1日の旅”を描く『TOKYOタクシー』[c]2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

本作は、昭和、平成、令和と日本に生きる人々を長年描き続けてきた山田監督が、刻々と変化する東京を舞台に人生の喜びを謳いあげるヒューマンドラマ。タクシー運転手の宇佐美浩二(木村)は、ある日、85歳の高野すみれ(倍賞)を東京の柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになる。すみれは浩二に、いくつか寄り道を依頼。次第に心を許したすみれは自らの壮絶な過去を語り始め、偶然出会った2人の心、そして人生が大きく動いていくことになる。

走行中のタクシー車内でのシーンの撮影には、“バーチャルプロダクション”(セットの中に置かれたタクシーの周りを取り囲むように立つLEDウォールに、車窓の風景を映し出しながら撮影する技法)という山田組にとって初となる技術も活用されている。

――『ハウルの動く城』でソフィーとハウルとして声の共演を果たしたお2人ですが、実写映画でのタッグは今回が初めてのこと。ほぼタクシーという密室のなか、2人きりのやり取りで物語が進んでいきますが、そういった相手としてご一緒した感想を教えてください。

木村「目を合わせてセッションをさせていただくのは、今回が初めてでした。とはいえ『ハウルの動く城』という作品の存在が、自分と倍賞さんの間合いを無条件に縮めてくれているようなところもあって。『ハウルの動く城』をやらせていただいた当時は、あまりスキンシップを図ることはできなかったんですが、ソフィーとハウルという関係性を一度経験したうえでのセッションだったので、今回の現場でコミュニケーションを取ることになってもド緊張をしたりすることなく、違和感なくお話することができました。それは僕自身、不思議な感覚でした」

倍賞「私は緊張しました」

木村「絶対、嘘だ!(笑)」

倍賞千恵子、「毎日、浩二さんに会うのが楽しみになっていった」と笑顔
倍賞千恵子、「毎日、浩二さんに会うのが楽しみになっていった」と笑顔撮影/木村篤史

倍賞「緊張しました(笑)。でも同時にすごく楽しみでした。今回は撮影スタジオに入ると、真ん中にタクシーが用意されていて。その周りにスクリーンがあって、車窓の風景が映し出されるようになっていました。『ハウルの動く城』ではあまり私語はできなかったけれど、今回の現場では木村くんとタクシーの中でいろいろな話ができました。すみれさんという役は、私にとってこれまで演じたことがないような役でしたが、毎日、浩二さんに会うのが楽しみになっていくような現場でしたね。実は撮影に入る前、木村くんのコンサートに行かせていただいて。お客さんと一緒になって、私も『イエーイ!』と盛り上がっていたんです(笑)」


木村「自分のライブの客席に、山田監督と倍賞さんがいるんですから!なんだこのシチュエーションは…と。緊張しました(笑)」

倍賞「ステージにいる木村くんからは、ものすごい勢いや力を感じました。でも今回の浩二さんは、一つの家庭を持っているタクシー運転手さんの役。どうなるんだろうという想いもありましたが、現場では変化している木村くんを目にして、私も『変わらなきゃ』と思いながら一緒にお仕事をさせていただきました」

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