『プレデター:バッドランド』監督が語る「プレデター」の原体験、シリーズを支える伝説的デザイナーとの「素晴らしい経験」
「プレデター」シリーズの最新作『プレデター:バッドランド』が11月7日(金)に公開される。今回シリーズ初となる、プレデターを主人公に描く新章として注目されている本作を手掛けたダン・トラクテンバーグ監督が、「プレデター」との出会いや、これまでにない物語の魅力、クリーチャー表現の舞台裏など、本作の制作秘話をたっぷりと語った。
舞台は、生存不可能と謳われる最悪の地“バッドランド”。この地に追放されたのは、若きプレデター、デクだ。誇り高き戦闘一族から追放されたデクは、次々と敵に襲われる。そんな彼の前に現れたのは、上半身しかないアンドロイド、ティア(エル・ファニング)。“狩り”に協力すると陽気に申し出る彼女には、ある目的があった。果たしてデクは、究極の敵を狩って真のプレデターになれるのか、それとも“獲物”になってしまうのか。規格外のコンビが挑む、究極のサバイバルSFアクションが始まる!
「プレデター映画の本質は複数のジャンルが見事に融合している点」
『プレデター:ザ・プレイ』(22)、『プレデター:最凶頂上決戦』(25)に続き、同シリーズに携わるのは本作で3作目となるトラクテンバーグ監督。今作で彼が挑んだのは、これまで語られることのなかった“プレデターの視点から描く物語”だ。監督は第1作『プレデター』(87)との出会いをこう語る。
「最初の『プレデター』が公開されたのは、私がまだ小学生のころで、R指定だったため観ることを許されなかったんです。だけど6年生の男子たちが全編を説明してくれました。だから私は『プレデター』を実際に観るずっと前から、その姿を想像していたんです」と述懐。語り聞かされた物語を頭の中で再構築するという少年時代の実体験が、どうやら発想の源となったようだ。
おもしろいのは、実際の『プレデター』が、監督の想像していた映画とは、まったく違っていたことだ。「実際に観た時、本当に驚かされたのは、ただただ狂気じみたクリーチャーのデザイン(確かに怖かったが、同時に超クールだった)だけではなく、それがジャンルの融合であったこと。少なくとも私が手掛けたシリーズ作品において、プレデター映画の本質は複数のジャンル、様々な種類のセットピースやアクションが見事に融合している点だと考えました。サスペンスシーンに、恐怖へと向かう瞬間、爆発や銃撃戦が繰り広げられる伝統的なアクションシーンなど、単調ではなく、実に多様な要素を味わえるんです」と、この視点こそが、後に『バッドランド』におけるプレデター自身の内面を見つめる物語へとつながっていく。
『ザ・プレイ』のヒット後、続編の構想を求められた監督は、新たな方向を模索した。「人間を登場させるのは間違いだと確信していました。人間を登場させれば、観客は皆、怪物よりも人間に惹かれてしまう。観客がデクの味方になるようにしたかったのです」と考えて至ったのが「怪物とロボットの美しい物語」というアイデアだった。寡黙な戦士デクが、下半身を失ったおしゃべりなロボット、ティアと出会い、シリーズをまったく新しい方向へ導いていく。
「今回は、ヤウージャと呼ばれるプレデター種族に焦点を当てた、プレデター・ユニバース初の作品です。これまでの『プレデター』シリーズは、“人間が未知の存在に遭遇する物語”として語られてきましたが、本作では、若きプレデター、デクの視点から物語をたどることで、彼らの誇りや文化、戦士としての葛藤がより鮮明に映し出されます」と見どころを語る。狩る側から、狩られる側へ。その視点の転換が、シリーズに新たな息吹をもたらす。
「この映画では、映画の魔法を生み出す様々な方法が融合されている」
続いて、ニュージーランドのVFXスタジオ「WETA」との制作秘話へ。トラクテンバーグ監督は、過去作とは異なる本作では、これまで悪役であったプレデターに観客が共感し、感情を重ねる物語を成立させるために、クリーチャーの“生きているリアリティ”が不可欠だったと語る。「『プレデター』が特別なのは、プラクティカルなスーツを使ったエフェクトです。それはこの分野における最初の大きなパイオニアの1つです」と、実際に『バッドランド』でも、シリーズの伝統を受け継ぎながら、WETAとの協働によって、その造形をより進化させていった。
「観客に、恐ろしい見た目のクリーチャーと絆を深めてほしいと思っていました。その方法論はスーツを着た人。WETAワークショップがフィジカル(スーツ)の部分を、WETAデジタルが映画のCGを担当しています。『ザ・プレイ』では、CGで補強することがたくさんありましたが、今回デジタルで作る部分は、クリーチャーの肉体に合わせるのではなく、そのスーツに合わせたのです。WETAが驚くほど見事にそれを作っていて、本当にエイリアンのクリーチャーが動いているように感じられます」と、“スーツを基点にしたデジタル処理”という手法が、本作の生命感を支えたと熱弁する。
WETAとの仕事において監督が「このうえなく素晴らしい経験」と明かしたのが、伝説的スペシャル・エフェクト・アーティスト、アレック・ギリスとの仕事だった。「彼は、1作目はやっていなかったかもしれませんが、それ以降すべての『エイリアン』映画、『プレデター』映画を手掛けてきました。本当に素晴らしかったのは、彼が僕たちの初期デザインの多くを手掛け、その後ニュージーランドに行ってWETAと時間を過ごしたことです。それは、アレック・ギリスにとっても素晴らしい経験で、WETAと私にとっては『なんてこった、あの巨匠と一緒に仕事ができるんだ!』 という想いでした」と述懐。
「アレックは、彼らの多くがその仕事を志したきっかけとなった人。彼は若いクリエイターたちと共に、自分のスタジオでは想像もできなかったようなCGIの挑戦をしていた。彼は目に涙を浮かべながら話し、僕も彼の経験を聞いて涙が出ました。この映画では、映画の魔法を生み出す様々な方法が融合されているんです」と感激しきりだ。
「プレデター」との出会い、憧れの巨匠との協働、そしてWETAの技術の融合。その結晶として生まれた『プレデター:バッドランド』をぜひ映画館で体感していただきたい。
文/山崎伸子
