三宅唱監督、シム・ウンギョン、河合優実が語り合う“言葉”の奥深さ。『旅と日々』は「体で感じ、目で聞き、耳で見る映画」
映画『旅と日々』(公開中)の“旅”とは、Travel(トラベル)のみならずTrip(トリップ)やJourney(ジャーニー)といった心の旅路の意味合いもそこに含まれているのでは――。と、そんなような趣旨の問いかけをしたことから、本作の監督と演者のお二方、「三宅唱×シム・ウンギョン×河合優実」の鼎談は流れのまま、タイトルの話題から始まったのであった。
「印象派のドビュッシーやラヴェルのクラシック、グレン・ミラー・オーケストラのスウィング・ジャズなど、李のプレイリストを想像して作りました」(シム・ウンギョン)
三宅「ストレートに、今回の物語の核はなんだろうと考えた時、そうだ!『旅と日々』だ、と直感的に頭に浮かびまして。“旅”と“日々”が軽く韻を踏んでいるのもチャーミングかなと』
シム・ウンギョン「台本を読む前にその文字の並びを目にして、映画の中で旅をする、彷徨う人の話なのかなあ、とまず率直に思いました。本当にそういう映画だったのですが、もしかしたら主人公は今も “旅の途中” なのかもしれないとか、いろんな感覚にいざなってくれるタイトルです」
河合「シンプルさがいいですよね。好きです。でもなぜ好きなのか、言葉に変えるのは難しい…。きっと生きていくって“旅”と“日々”しかない気がするんです。旅しているか、日々を過ごしているか、どちらかの状態しかないというか。完成した映画を観終わって、私はそう感じました」
冒頭の舞台は東京。主人公の脚本家・李(イ)は日本に住む韓国人。登場シーンから仕事モードで、古風にも鉛筆を持ち、悩みつつひらめいた映画の情景描写を白いノートにハングルで書きつけていく。役をつかむためにシム・ウンギョンは様々なアプローチの中、三宅監督とこんなやりとりもしたという。
シム・ウンギョン「李というキャラクターは普段、こういう音楽を聴いてるんじゃないかとプレイリストを想像して作り、メールで送ったんです。例えばクラシック音楽ではドビュッシーやラヴェルの印象派の曲だったり、それから1930〜40年代初めに一世を風靡したグレン・ミラー・オーケストラのスウィング・ジャズだったり。監督は監督で李のプレイリストを作ってくださっていたんですけれども」
三宅「これまでの映画でも毎回、既成曲のプレイリストを用意する作業は自分の楽しみでやっていたんですけど、ウンギョンさんからも送ってもらえたことはヒントになり、助かりましたし、あと、日韓の多岐にわたる時代の小説家、詩人についての印象を共有したのも大きかった。日本の作家では太宰治や立原道造、韓国の詩人では李箱(イ・サン)、それと小説家の韓江(ハン・ガン)といった言葉と格闘している方たちですね。もう一点、ウンギョンさんと僕を繋いだ一番のアイコンは、サイレント映画の喜劇王のひとり、バスター・キートン!お互いに、キートンのお気に入りの写真を送り合ったりしたんです」
