『星と月は天の穴』1960年代の男女の濃密な空気を閉じ込めたアザービジュアル&色気溢れる場面写真
日本映画界を代表する脚本家、荒井晴彦が監督を務めた、綾野剛主演最新作『星と月は天の穴』が12月19日(金)より公開される。このたび、本作のアザービジュアル、新場面写真5点が解禁となった。
『Wの悲劇』(84)、『リボルバー』(88)、『大鹿村騒動記』(11)、『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)でキネマ旬報脚本賞に5度輝いた脚本家、荒井。『身も心も』(97)をはじめ、『⽕⼝のふたり』(19)、『花腐し』(23)など、⾃ら監督を務めた作品では⼈間の本能たる「愛と性」を描き、観る者の情動を掻き⽴ててきた。最新作となる本作は、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化したもの。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている。主人公の矢添克二を荒井と『花腐し』でもタッグを組んだ綾野が演じ、矢添と出会う大学生の紀子を咲耶が演じる。
このたび、本作のアザービジュアルと新場面写真が解禁に。アザービジュアルは、ブランコを漕ぐ紀子と、それを自宅マンションから見下ろす矢添の姿が空気感とともに写しだされている。撮影したのは、写真家の野村佐紀子。荒井監督とのタッグは『身も心も』、『火口のふたり』、『花腐し』に続き4作目となる。彼女が撮る写真は、エロスとタナトスに満ちた世界観で既に国内外で高い評価を得ているが、今回のアザービジュアルではじっと公園を見下ろす矢添に焦点が当てられ、開放的な空間でありながらどこか閉塞的で淫靡な2人の関係を匂わせる濃密な空気をとらえている。「風、空気、ブランコの音が聞こえてきそう」と荒井監督も大絶賛の写真となった。
あわせて場面写真も一挙5点解禁。こちらも野村の撮影によるもの。布団の上に座り女の影に照らされる矢添、奇妙な関係性を映しだす矢添と紀子の2人、そして、公園で1人ブランコに乗る娼婦の千枝子、矢添のこじらせた繊細な心情とそれぞれ掴み切れない女性たちの姿が写されている。また、クラシカルな郵便ポストと紀子のファッションから、舞台となる1969年当時の風俗を思わせる1枚も。さらには、憂いの表情に煙草を燻らせる矢添のカットも。同じ作家という職業も相まって、“モテ男”の証言があるほど色男だったという原作者の吉行をどこか連想させ、綾野もこれまでに見せたことがない“男の色気”を醸しだす。
モノクロの世界を映しだす野村佐紀子の写真と同様、全編モノクロで撮影されている本作。時代の空気や質感をスクリーンに転写したいという荒井監督の意図からモノクロで撮影された滋味深き日本映画をぜひ劇場で楽しんでほしい。
文/鈴木レイヤ
