あなたは共感できる!?『ひらいて』『彼女が好きなものは』『恋に至る病』など山田杏奈が演じてきた歪な恋愛模様
セクシャリティに苦悩する男子高校生に幸せなひと時を与え、頼もしい相棒となる『彼女が好きなものは』
そして山田が出演する一風変わったシチュエーションの恋愛映画として外せないのは、神尾楓珠と共演した『彼女が好きなものは』(21)だろう。この作品はゲイである男子高校生の純(神尾)が、自身のセクシャリティを隠してBL好きの女子高校生の紗枝(山田)と付き合ったことで一大騒動が巻き起こる青春ラブストーリー。2019年にドラマ化もされた浅原ナオトによる小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」が原作で、“マイノリティとして生きること”をテーマに様々な偏見や無知と闘いながら自らの生き様を模索する若者たちの姿が胸を打つ快作に仕上がっている。
「それでも異性と結婚して家庭を築きたい」と苦悩する神尾の渾身の演技も素晴らしく、そんな純に“普通”の高校生カップルとしての幸せなひと時を与え、頼もしい相棒となる紗枝を体現した山田の“陽”の演技も光る。等身大のキャラクターを演じ切った彼女のキュートな存在感をぜひご覧あれ。
プライドを傷つけられた少女が歪んだ三角関係を巻き起こす『ひらいて』
一方、親しみの沸くキュートな役柄とはガラリと変わり、凛とした勝気な美少女としての山田の佇まいが堪能できるのが、芥川賞作家の綿矢りさによる同名小説を実写化した『ひらいて』(21)。この作品では、成績優秀で人気者の女子高校生の愛(山田)が、クラスでも目立たない地味系男子のたとえ(作間龍斗)に片思いするも、自分だけの想い人だと思っていた彼に秘密の恋人がいたことで屈折していく歪んだ恋を描いている。
いつも輪の中心にいるスクールカースト上位の愛は、恋のライバルが地味系女子の美雪(芋生悠)であることにショックを受け、暴走していく。そしてプライドを傷つけられた愛が取った手段が、“好きな人の好きな人を奪う”こと。彼女が巻き起こす、恋と嫉妬と友情が渦巻く三角関係から目が離せない。
恋に突っ走り、現実に苛立ち、空回りする『ジオラマボーイ・パノラマガール』
また、岡崎京子の人気コミックを原作とした『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20)では、山田は橋の上で出会った青年、神奈川ケンイチ(鈴木仁)に一目惚れする渋谷ハルコ役にトライ。この作品でも失恋によって道を踏み外していく女性を演じているが、作品全体のトーンはポップで疾走感にあふれており、イマドキの若者の孤独と衝動を描いた恋と成長の物語となっている。
恋に突っ走るハルコは、現実が理想通りに進まないことに苛立ち、空回りする。そんな彼女の“まっすぐすぎる純粋さ”と“傷つきやすさ”を、山田は体温のある演技で丁寧に表現。ハルコが抱える未来が見えない不安や焦燥は、恋愛に限らず「どう生きるか」、「どう他者と関わるか」に迷う現代を生きる若者の映し鏡でもある。岡崎作品特有の毒と透明感を兼ね備えたヒロイン像に、山田の存在感が見事にマッチしていた。
恋に憧れ、恋に傷つきながらも懸命に“いま”を生きる女の子たちを体現してきた山田。ヒロインたちが抱える思春期特有の感情の揺れや危うさ、まぶしさを、彼女は繊細な感情表現と確かな演技力で自分のものにしてきた。そして、最新作『恋に至る病』でもさらなる予測不能な“恋の闇”へと足を踏み入れる。誰もが魅了されずにはいられない人気者の少女は果たして天使か、それともモンスターなのか?今度の山田杏奈はどんな“歪な恋”を見せてくれるのか?その答えをスクリーンで確かめてほしい。
文/足立美由紀
