情緒あふれるロケ地、想像を膨らませる仮想世界…キーワードで細田守監督作の魅力をひも解く【スタジオ地図「A to Z」連載第3回】

コラム

情緒あふれるロケ地、想像を膨らませる仮想世界…キーワードで細田守監督作の魅力をひも解く【スタジオ地図「A to Z」連載第3回】

M…Master and Pupil【師弟関係】

サマーウォーズ』では少年・佳主馬が祖父の陣内万助を“師匠”と呼び、少林寺拳法を習っていた。『おおかみこどもの雨と雪』では、雨が老アカギツネの“先生”に山の中で生きる術を教わる。『バケモノの子』では熊徹と九太の師弟関係が疑似的な“父と息子”の親密さに発展していく。

強さを求め、嫌々ながらも熊徹の弟子となった九太(『バケモノの子』)
強さを求め、嫌々ながらも熊徹の弟子となった九太(『バケモノの子』)[c]2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

こういった師弟関係は細田守作品の中にしばしば登場するモチーフだ。親あるいは血縁にこだわらず、若き後続を育てる存在。これはFamily【家族】についての考察に関連したサブテーマと規定できるかもしれない。

N…No Shadow【影なし作画】

『果てしなきスカーレット』の壮大でリアルな風景も見どころの一つ
『果てしなきスカーレット』の壮大でリアルな風景も見どころの一つ[c]2025 スタジオ地図

キャラクター自体に影をつけず、リアルな風景の中で人物をシンプルに際立たせる細田守作品の特徴的な演出法。もともとは細田監督の古くからの盟友であり、現・スタジオ地図所属のアニメーター、山下高明の案だった。山下は劇場版『デジモンアドベンチャー』(99)、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』、『竜とそばかすの姫』、『果てしなきスカーレット』など多くの細田作品で作画監督を務めている。

キャラクターの存在感を際立たせるこの手法は、構図にも通じる。実写で言うところのカメラアイを振り回さず、同ポジションのカットを積み重ねていく演出など、細田作品では万人向けの"観やすさ"が丁寧に志向されている。

O…<OZ>【オズ】

世界中の人々が集い、楽しむことができるインターネット上の仮想世界、<OZ>(『サマーウォーズ』)
世界中の人々が集い、楽しむことができるインターネット上の仮想世界、<OZ>(『サマーウォーズ』)[c]2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

『サマーウォーズ』に登場したインターネットを介してアクセスできる仮想空間。<OZ>のデザインで細田監督と初タッグを組んだセットデザイナーの上條安里は、『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』でも美術設定を担当し、『竜とそばかすの姫』では再び物語の舞台であるインターネット仮想空間である<U>をデザインした。ちなみに細田監督がインターネットを題材に作品を手掛けた作品には、インターネット黎明期のネットを舞台に描いた『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(00)もある。

<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる(『竜とそばかすの姫』)
<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる(『竜とそばかすの姫』)[c]2021スタジオ地図


文/森直人

スタジオ地図の世界からひも解く『果てしなきスカーレット』特集【PR】

関連作品