CIAの極秘実験、異世界へつながる地下鉄、廃病院…傑作カルトムービー『ジェイコブス・ラダー』に渦巻く都市伝説に迫る

CIAの極秘実験、異世界へつながる地下鉄、廃病院…傑作カルトムービー『ジェイコブス・ラダー』に渦巻く都市伝説に迫る

異世界へとつながる地下鉄

映画の冒頭、深夜に地下鉄で恋人のアパートに向かっていたジェイコブは、駅の出口が閉鎖されていたために、線路に降りて出口を探しているうちに暗闇に足を踏み入れる。地下鉄には「存在しない路線に紛れ込んだ」、「目的の駅にたどり着けない」といった都市伝説的な逸話も多く、こういったエピソードを題材にした『ゴーストバスターズ2』(89)や『0:34 レイジ34フン』(04)、『ミッドナイト・ミート・トレイン』(08)などホラー映画も製作されている。閉鎖性や都市の裏側に広がる暗闇のイメージから、異世界への入り口になっているのでは?という恐怖の温床にもされてきた地下鉄。見知らぬ駅で降りたジェイコブがさまよい歩き、不気味な“なにか”が乗った車両を目撃する地下鉄のトンネルは、まさに地獄への入り口なのだ。

【写真を見る】不気味な“なにか”が乗った車両は異世界へ向かっているのだろうか?
【写真を見る】不気味な“なにか”が乗った車両は異世界へ向かっているのだろうか?[c] 1990 STUDIOCANAL

かつて大勢の死者を出した廃病院

映画後半で、政府関係者らしき男たちに拉致されたジェイコブは、車から飛び降り大けがをして病院に担ぎ込まれる。ところが看護師たちは、彼を廃病院のような建物の地下、奇妙な患者がひしめく施設に運んでいく。廃病院は怪談系都市伝説の代表格だ。ケンタッキー州のウェイバリー・ヒルズ・サナトリウムは結核の療養施設として知られ、数万もの死者を出し、遺体は地下トンネルを通して運びだされたという。閉鎖後も心霊スポットとして人々の関心を集めることになり、インディアナ州立サナトリウムなど同様の施設は少なくない。

頭を固定されてショック療法を強要されるジェイコブ
頭を固定されてショック療法を強要されるジェイコブ[c] 1990 STUDIOCANAL

地下の診療室に運び込まれたジェイコブは、頭を固定されてショック療法を強要される。電気ショックや脳の一部を切除するロボトミーで知られるのが、バージニア州のセント・オールバンズ療養所。ここで治療を受けた多くの患者が自殺し、不気味な声や足音が鳴り響く最恐スポットの一つになった。死者の記憶が染みついたまま朽ちた廃病院。本作でも苦痛が支配する地獄のメタファーとして存在感を放っている。


サイコスリラー、ホラーにカテゴライズされる『ジェイコブス・ラダー』の劇中には、このように様々なメタファーが散りばめられている。そんなサインを探す楽しみも、本作が時代を超えて愛されている理由の一つ。エイドリアン・ライン監督らしい凝ったビジュアルを含め、スクリーンで味わいたい作品なのだ。

文/神武団四郎

「MOVIE WALKER PRESS」のホラー特化ブランド「PRESS HORROR」もチェック!