CIAの極秘実験、異世界へつながる地下鉄、廃病院…傑作カルトムービー『ジェイコブス・ラダー』に渦巻く都市伝説に迫る

CIAの極秘実験、異世界へつながる地下鉄、廃病院…傑作カルトムービー『ジェイコブス・ラダー』に渦巻く都市伝説に迫る

ティム・ロビンス主演作『ジェイコブス・ラダー』(90)が4Kレストア版でリバイバル公開中だ。『フラッシュダンス』(83)、『危険な情事』(87)のエイドリアン・ライン監督によるサイコスリラーで、PTSDを発症したベトナム帰還兵が体験する恐怖が描かれる。悪夢と幻覚が混在する世界観が展開され、いまだ多くの映画ファンが熱烈に支持。そんな本作がカルトムービーと称される所以が、怪談や都市伝説を取り入れた劇中の様々なモチーフだ。

ベトナム帰還兵が悪夢や幻覚を見るのはPTSDが原因なのか?

ベトナム帰還兵のジェイコブ(ロビンス)は、郵便局で働きながら家族と離れて恋人のジェジー(エリザベス・ペーニャ)と暮らしている。戦争で重傷を負った彼は、体の不調に加えて戦場の悪夢や不気味ななにかに追われる幻覚に悩まされていた。そんなある日、ジェイコブは同じ部隊にいた戦友たちも悪夢や幻覚に悩まされていることを知る。彼らは弁護士を雇い、真相を突き止めようとするのだが…。

ベトナム帰還兵で不気味な悪夢や幻覚に悩まされているジェイコブ
ベトナム帰還兵で不気味な悪夢や幻覚に悩まされているジェイコブ[c] 1990 STUDIOCANAL

「ヤコブの梯子」など旧約聖書がインスピレーションに

現実と虚構が混在しながら進展する本作のタイトルは「ジェイコブ(ヤコブ)の梯子」。旧約聖書「創世記」に登場する天国につながる梯子のことで、精神的昇華の象徴とされている。本作の原案、脚本を務めたのは、日本でも大ヒットした『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)のブルース・ジョエル・ルービン。ジェイコブがヤコブ=神に選ばれた者であるほか、彼の死んだ息子(マコーレー・カルキン)の名前はゲイブでつまりガブリエル=天使、恋人のジェジーはイザベル=誘惑、堕落とも読み取れるなど、登場人物も旧約聖書にインスピレーションを受けている。本作について「死の受容についての寓話」とライン監督が語るように、ジェイコブが目にする幻覚はいわば地獄の視覚化。そのモチーフとして使われているのが、語り継がれてきたおなじみの都市伝説なのだ。

誘惑、堕落を意味するイザベルのジェジーなど登場人物の名前は旧約聖書にインスピレーションを受けている
誘惑、堕落を意味するイザベルのジェジーなど登場人物の名前は旧約聖書にインスピレーションを受けている[c] 1990 STUDIOCANAL

CIAが極秘で進めていたMKウルトラ計画とは?

ジェイコブの幻覚の原因とされているのが“ラダー”と名付けられたドラッグだ。人間の闘争本能を強化するため軍が極秘に開発した薬品で、ベトナムで密かに人体実験を実施。ラダーを投与されたジェイコブら部隊の兵士たちは、常軌を逸した殺戮を繰り広げてしまう。このラダーのモデルが、吸引すると幻覚を誘発するBZ(キヌクリジニル・ベンジラート)弾。冷戦時代の当時、CIAはBZをはじめLSDなど薬物によるマインドコントロールを目的にした「MKウルトラ計画」を進めていた。同意を得ることなく民間人を含む多くの人々に薬が実験的に投与され、ベトナムの戦場でも使われたという。書類など証拠の多くが破棄されたBZに関する闇深い一文が、映画のエンドロールの前に提示されている。

CIAが進めていたMKウルトラ計画が題材に
CIAが進めていたMKウルトラ計画が題材に[c] 1990 STUDIOCANAL


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