山田裕貴と佐藤二朗、「『これはハズせないぞ』と臨んだ」映画『爆弾』のキャスティング秘話と怪演の真相を語る
「このミステリーがすごい!2023年版」(宝島社)&「ミステリが読みたい!2023年版」(ハヤカワミステリマガジン)双方で1位に輝いた、呉勝浩による同名ベストセラー小説を映画化した『爆弾』(10月31日公開)。ケチな騒ぎを起こして拘留された冴えない中年男、自称・スズキタゴサクが「霊感が働いた」と爆弾の存在をほのめかす。“ふざけた戯言”と思いきや爆発が起きる。するとタゴサクはうれしそうにヒントのようなクイズを出し、次なる爆発を予告し…。不気味な中年男と警察の攻防に、観客も頭をフル回転させながら手に汗握るリアルタイムミステリーだ。
タゴサクの前で飄々と鋭い推理力を働かせる主人公の類家を演じるのは、主演作が続々と公開されている山田裕貴。一方、すっとぼけた笑顔で刑事たちを翻弄する狂気のタゴサクを怪演するのは、佐藤二朗。「天才vs天才」とも「怪物vs怪物」とも言える攻防を繰り広げた2人に、MOVIE WALKER PRESSがその舞台裏と本音に迫る。
「皆さんのイメージとは全然違うと思いますが、僕は類家のマインドに相当似ている」(山田)
――原作を読んだ感想、その映画化でオファーを受けた時のことを教えてください。
山田裕貴(以下、山田)「あまりに原作がおもしろすぎて、思わず『これ、前・後編でやりますよね!?』とプロデューサーさんに聞いてしまったほどです。そうしたら『1本でやる』と言われて、『ほぅ~』というのが第一印象です」
佐藤二朗(以下、佐藤)「僕は別の作品でご一緒しているプロデューサーから、居酒屋で『すごい小説があるよ。そこに出てくるタゴサクという役を、二朗さんがやるとおもしろいと思うんだよね』と言われたんです。それで原作を読んだら、もう圧倒されました。これはスゲエな、と」
山田「僕もタゴサク役には二朗さんがいいなと思っていたら、本当にキャスティングが決まって驚きました」
佐藤「原作にタゴサクが“小太りの中年であり、どこにでもいそうな風貌だ”とあって、第一のハードルをクリアしているな、と(笑)。しかも“中日ドラゴンズファン”もクリア。さらに物語の舞台『野方警察署、始まって以来の大事件である』と読んで、もう『怖っ!』となって。だって僕、東京で初めて住んだのが野方なんですよ。そうしたらオファーが来て、『ようこそ~』って(笑)」
山田「僕は『東京リベンジャーズ』シリーズでもご一緒した岡田(翔太)プロデューサーから、『本当の山田くんはこっち(類家)だよね』と言われ、よくぞ見抜いたな、と(笑)。皆さんのイメージとは全然違うと思いますが、類家のマインドに相当似ているんです。それは類家のように頭がいいということではなく、類家という人間がタゴサクのような“真に悪意を持つ者”の気持ちがわかってしまう、という点において。なぜタゴサクがあんなふうになったのか、彼が世界や人間に対して悲観している部分を、僕も自分の人生の中で体感してきているので。演じるうえでも類家の気持ちがわからない部分はなかったです」
