物語は食育から“食文化の継承”へ――鯨の竜田揚げ、筑前煮、せんべい汁…「おいしい給食」が誘う給食バトルの変遷

コラム

物語は食育から“食文化の継承”へ――鯨の竜田揚げ、筑前煮、せんべい汁…「おいしい給食」が誘う給食バトルの変遷

地域の食文化をつなぐ役割としての“給食”

そしてシーズン3の舞台は北海道へ。市原はこのシーズンをスタートさせる際に「シーズン3をやる意義を見いださなければと考えました」と語っているが、その深い想いを反映し、給食バトルは新たなステージへと突入。北海道で出会う人々やご当地グルメを通して、“給食=教育の一環”だった世界が “給食=文化の継承”へとスケールアップしていくのである。

そんな新章で甘利田が赴任したのは、函館の忍川中学校。ここで待ち受けていたのは、新たなライバルの粒来ケン(田澤泰粋)だ。第1話から早速始まった「チリコンカン対決」では、ケンが食パンにチリコンカンと棒チーズを乗せ、教室のストーブで香ばしく焼き上げたピザトースト風アレンジを披露。さらに第7話の「カレースープ対決」では、ライスを平らにして焼き上げ、ナン風にしてカレースープに浸すという斬新な発想で甘利田を唸らせた。

そしてシーズン3を締めくくる劇場版第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』(24)では、甘利田が北海道への赴任を承諾する一因ともなった郷土料理“イカメシ”がついに給食メニューに!北海道の味を学校の食卓に取り入れる“ご当地給食”として、シリーズが本格的に地域グルメの方向へ舵を切った。

給食のおばさん牧野(いとうまい子)が開けるバットの中にはメロンパンが…!
給食のおばさん牧野(いとうまい子)が開けるバットの中にはメロンパンが…![c]2025「おいしい給食」製作委員会

この流れを受け継ぐ最新作『おいしい給食 炎の修学旅行』では、甘利田ご一行が函館を飛びだし2泊3日の修学旅行へ。青森&岩手といった北東北をまわるなかで、名物料理や地元食材をめぐるバトルが繰り広げられ、シリーズ史上最もスケールの大きな“食対決”が展開される。

シリーズ3から引き続き登場する甘利田のライバル、ケン。劇場版でも彼の“アレンジ給食”が唸る
シリーズ3から引き続き登場する甘利田のライバル、ケン。劇場版でも彼の“アレンジ給食”が唸る[c]2025「おいしい給食」製作委員会

アツアツの「せんべい汁」や、食+エンタテインメントの最高峰「わんこそば」など、郷土色あふれる東北の名物料理が次々登場。甘利田は“食の冒険者”であるケンの想定外のアレンジや哲学に翻弄されつつ、地元の味に舌鼓を打つ。ご当地グルメという新たな“食の道”が開かれる一方で、卒業を迎えたケンとの胸アツのシーンも必見だ。

さらに旅先ではトラブルに巻き込まれたケンを助けようとした甘利田の前に、かつての同僚である御園ひとみ(武田玲奈)が現れる。御園が務める花堺中学校は、“無言給食”を徹底する厳格な校風。「食事は楽しくとるもの」という甘利田の信念と、効率を重んじる教育現場の方針がぶつかり合う!これまでシリーズが描いてきた「健康」、「完食主義」、「食の自由」といったテーマを受け継ぎつつ、管理教育との対立という新たな社会的課題にも踏み込んだ内容となっている。

岩手といえばもちろんわんこそば。ここでもまた甘利田vsケンの対決が勃発!?
岩手といえばもちろんわんこそば。ここでもまた甘利田vsケンの対決が勃発!?[c]2025「おいしい給食」製作委員会


“みんなで楽しく食べる”という給食の原点に立ち返った『おいしい給食 炎の修学旅行』で、甘利田はどんな食の発見をし、成長を遂げるのか。そして御園との気になる恋の行方は?垂涎の給食バトルと共に、その結末を直接その目で確かめてほしい。

文/足立美由紀

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