天野千尋監督最新作『佐藤さんと佐藤さん』東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門公式出品決定
第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で上映された『ミセス・ノイズィ』(20)の天野千尋監督の最新作『佐藤さんと佐藤さん』(11月28日公開)。このたび本作が、東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門に公式出品されることが決定した。
岸井ゆきの、宮沢氷魚がW主演を務める本作は、“夫婦”という誰にとっても人生において一度は考えるテーマを軸に、人と人との関係を丁寧に、そしてヒリヒリするくらいリアルに描いたオリジナルストーリー。苗字が“佐藤”同士のサチとタモツが、交際、結婚、出産を経て歩んだ15年間を丁寧に映しだす。苗字は変わらなくても、夫婦という関係は常に揺れ動き、ぶつかり合い、変化し続ける。そんなリアルな夫婦の形に迫る物語になっている。
このたび、10月27日(月)より開催される第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門に本作が公式出品されることが決定。11月28日(金)の全国公開に先駆け、ジャパンプレミア上映となる。同部門は、去年新設され、東京都と連携し女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてた部門。天野監督は本作の企画の発端について、「10ほど年前、自分自身が結婚、出産、ワンオペ育児に直⾯したときに、それまでは見えていなかった社会の『壁』や『穴』の存在に気づき、その狭間で苦しんだ経験が出発点になっています」とコメント。「また、苗字呼びが一般的な日本では、苗字が個⼈のアイデンティティになっているにもかかわらず、結婚は家制度や⼾籍と紐づいているものだから、そこに⽭盾が⽣じてしまう。選択的夫婦別姓の議論もあり、結婚をテーマにするときに苗字の問題は外せないと考えていました」と語っている。
また、東京国際映画祭への出品決定にあたっては「2025年の東京国際映画祭で上映できること、とても嬉しく思います。2025年の東京には『他者』が溢れていて、それを排除しようとする声も多く聞こえます。でも私たちに必要なのは、排除して片付けることではなく、『他者』との折りあいの付け方をずっと考え続けることじゃないかと思います」とコメントが寄せている。前作『ミセス・ノイズィ』で第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に公式出品されており、本作含め2作連続の出品となる。
日常のささやかな感情の揺れを鮮明にすくい上げ、観る者の心に寄り添う天野監督。“夫婦”という最も身近でありながら奥深い関係を描くことで、観客に自分自身の物語を重ねさせる一本となった。ぜひ、全国公開に先駆けて公開となる第38回東京国際映画祭ジャパンプレミアでもぜひ本作に注目してほしい。