妻夫木聡、映画『宝島』公開初日に「映画の力ってすごい」と感無量!6年越しの公開に万雷の拍手
映画『宝島』の初日舞台挨拶が9月19日に新宿バルト9で行われ、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、栄莉弥、光路、大友啓史監督が出席した。
歴史の陰に埋もれたアメリカ統治下の沖縄の真実を描いた真藤順丈による直木賞受賞作を、2度の撮影延期の危機を乗り越えながら完成させた本作。日本に見捨てられ、アメリカに支配された島、沖縄。すべてが失われ、混沌とした時代を全力で駆け抜けた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの姿を、圧倒的熱量と壮大なスケールで映し出す。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田)の3人。そして彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていた一番年上のオンを永山が演じた。
構想6年、撮影期間は106日(2024年2月25日〜6月9日)、沖縄ロケ41日、エキストラ延べ5000人、総製作費25億円をかけて、いよいよ公開初日を迎えた。上映後の会場から大きな拍手を浴びてステージに上がった主演の妻夫木は、「最初に企画が上がったのが2019年。コロナなどもあって2度の延期があり、6年越しにこの日を迎えることができました。皆さんの想いのおかげだと思っています」としみじみ。大友監督は「個人的には20年近く温めていたテーマ」だと切り出し、「四半世紀くらいかけて、ようやく辿り着きました。ここにいないスタッフ、キャストもこの映画を支えて、今日まで引っ張ってくれました。よろしければ拍手を」と呼びかけると、観客からは万雷の拍手が上がっていた。
妻夫木は、“宝島宣伝アンバサダー”として6月から3か月間にも及ぶ全国キャラバンを実施。今日までに訪問した場所は27都市、名刺を手渡しした観客、劇場スタッフは5000名以上に達したという。この日のステージには、全国の人たちから届いた直筆メッセージを集めたスペシャルボードが登場。「魂が震えた作品」「3時間ずっと感動しました」「日本国民、全員に観てほしい」など、妻夫木の想いを受け取った人たちのメッセージは熱いものばかり。メッセージを見渡した妻夫木は「本当にうれしいです。感動的です。一つ一つの場所で、だんだん家族が増えていくような感覚をいただけた。皆さんに感謝しています」と感無量の面持ちを見せ、「映画は観ていただいて初めて完成するもの。この映画に至っては、観ていただいた後も皆さんによって成長させてもらっているという感覚がある」と直接手渡している実感を持てた映画だと熱を込めた。
沖縄の上映では観客から「ありがとう」という言葉をもらったという広瀬は、「沖縄の方に観ていただくのは楽しみなところでもあったんですが、ドキドキしていた。受け取ってもらえた直後に『ありがとう』と素直に伝えていただけたのは、これ以上の言葉はないなと。熱い気持ちになりました」と語り、窪田も「上映後の皆さん、お一人お一人の目がキラキラしている。その目を見ると、この仕事をやっていてよかったと思える。映画というフィルターを通して、皆さんと繋がれていると実感できる瞬間がたくさんあった」という。「オンという役は、この映画にとって大きな意味を持つ役。すごくプレッシャーを感じていた」という永山は、監督やスタッフの熱意や力を借りることができたと感謝。「覚悟を決めて、カメラに立つようにしていました」と情熱を注いだと振り返っていた。
栄莉弥は物語のカギを握る謎に包まれた孤児のウタに扮し、ウタの少年時代を実の弟である光路が演じた。栄莉弥は、兄弟で同じ役を演じるということを「あまり考えないようにしていました」と打ち明け、「とにかく自分は、18歳のウタを生きるということだけを考えていた。現場に入って、その場の空気と監督が言ってくださったことをそのまま、全力でアウトプットする。それだけでした」とがむしゃらだった日々を回想。光路も「すべてが初めてだったので、あまり考えずに現場に入って。監督に教えてもらったことをただひたすらやる感じでした」と同調していた。
熱を込めてトークを繰り広げる舞台あいさつの様子からも、一体感にあふれた現場だったことが伝わってきたが、妻夫木は「すずちゃんと窪田くんの長いシーンがあって。ナイトシーンで、3日くらいかかると言われていた。どうなるかなと思っていたんですが、1日で終わった。『2日間、休める!』と歓喜した。ものすごく一体感を感じた」と茶目っ気たっぷりに述懐。その分、撮影が休みとなった日には「親睦を深める意味でも、みんなでバーベキューをやりましょうとなって。いろいろ買って行ったけれど、火がつかなくて。どれだけみんな、バーベキュー素人なんだろうと…」と汗をかいた思い出を明かしていたが、広瀬はみんなで火をつけようと苦労した時間も「一体感があった」とにっこり。妻夫木も「火がついた!ってね」と大きな笑顔を見せていた。
ここまで走り抜けた妻夫木は、「不死鳥のように蘇る映画。想いの力ってすごいなと改めて感じました。想いがそこにある限り、立ち上がることはできる」といろいろな人の想いに背中を押され、今日までたどり着いたと吐露。「この映画自体も、想いが繋がっていくというお話でもあります。オンちゃんからもらった命のバトンをグスクが受け取って、グスクが思い描いた未来がいまならば、僕たちは託されたバトンをこれからどうやって繋げていけるかということだと思います。もしこの映画の力によって、誰かの人生を変えられる力が1パーセントでもあるのだとしたら、僕はその力を信じたい。映画の力って、すごいなと思わされた。たかが映画、されど映画なんだなと思っています。『宝島』という映画は、僕たちにとって子どものような存在。これから育ててもらうのはお客様。どうか立派な大人になるよう、これからもどうぞかわいがってもらえたらうれしいです」と愛情をたっぷりと込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝