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「攻殻機動隊 S.A.C.」神山健治監督が分析する、エイリアンのデザインと生態。「エイリアン:アース」で感じた、シリーズ共通の“閉鎖空間”とは?

インタビュー

「攻殻機動隊 S.A.C.」神山健治監督が分析する、エイリアンのデザインと生態。「エイリアン:アース」で感じた、シリーズ共通の“閉鎖空間”とは?

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」や『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(24)で知られる、日本を代表するトップクリエイターの一人、神山健治監督。アニメシリーズ「ブレードランナー:ブラックロータス」を手掛け、巨匠リドリー・スコットともゆかりがある神山監督に、ディズニープラス「スター」で独占配信中のドラマシリーズ「エイリアン:アース」を鑑賞してもらった。

第1話の鑑賞後には「次は地球を舞台にエイリアンがどういった恐怖を人類にもたらすのか?最初にエイリアンを映画館で見た直後に思い描いた妄想がようやく実現する」とコメントを寄せていた神山監督は、どのような点に着目して見進めていったのか?

※取材は「エイリアン:アース」第6話配信の翌日に実施。以降、第6話までのネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。

「本作は『エイリアン』と『ブレードランナー』、2つの柱で興味津々です」

――神山さん、「エイリアン:アース」いかがでしょうか?

「正直、観始めた時は『ちょっと詰め込み過ぎでは?』とは思ったんですよ。なぜなら“エイリアン”と“アンドロイド”、テーマが2つあるから。物語をクリエイトする立場からすると、話が複雑になる危険性があるので、そういうことはあまりやらない。でも、それは最初だけでした。本シリーズの場合、2つの柱は『エイリアン』と『ブレードランナー』ということもあって、興味津々です」

シリーズ初のドラマシリーズとなった「エイリアン:アース」
シリーズ初のドラマシリーズとなった「エイリアン:アース」[c]2025 Disney and its related entities[c]2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

――神山さんもクリエイターとして“リドリー・ユニバース”の洗礼は受けているわけですね?

「もちろんです。若い人はわかりませんが、僕たちの世代やもっと上の世代は、この2本を避けて通ることはできないですよ」

――神山さんは「ブレードランナー:ブラックロータス」をやっていらっしゃるので『ブレードランナー』は大きく納得ですが、「エイリアン」はどういうところに興味を?

「シリーズはすべて観ていますが、もっとも好きなのはスコットの1作目と、(ジェームズ・)キャメロンの2作目『エイリアン2』(86)です。最初の公開の時に観た1作目は『怖い』とは聞いていたんですがSF映画的に怖いんだろうと思っていたら、もっとホラー的な怖さだった。新しいジャンル、“SFホラー”との出会いに衝撃を受けたことを記憶しています。個人的には(スティーヴン・)スピルバーグの『ジョーズ』(75)を観た時の感じに似ていましたね。
とはいえ、僕の場合、“怖い”だけじゃなくてエイリアンのデザインとその生態がめちゃくちゃ興味深かった。これまでもスクリーンではたくさんのエイリアンというか宇宙人、宇宙生物が登場していましたが、こんなのは初めて。まさに“未知の生物”。しかも、その“未知”の部分が僕の大好きな昆虫の生態だったから夢中になっちゃって(笑)」

「エイリアン:アース」についてたっぷり語ってくれた神山健治監督
「エイリアン:アース」についてたっぷり語ってくれた神山健治監督

――昆虫そのものというより、その生態なんですね?

「そうです。例えば、エイリアンの特徴のひとつが口の中から飛び出してくる、もうひとつの口というかアゴじゃないですか。あれはヤゴと同じなんです。ヤゴも口の中からアゴのような器官が出てきて対象に噛みつく。僕はそういう生態を観察するのが大好きだったのですっごく興奮したんです。カブトムシは幼虫からさなぎへと変態するのがとてもおもしろく、皮がむけるとまるで違う形になっている。そういう“驚き”というのがエイリアンにはあった。
成長するたびに脱皮して変態して行く宇宙生物なんて、それまでいなかったように思います。というか、僕は見たことがなかった。それに体液が強烈な酸というのも昆虫と似ている。アリの蟻酸はそうですからね」


――言われてみると、確かにそうですね。

「虫が嫌いという人は、造形に対する生理的嫌悪を感じるものですが、(エイリアンの造形も)ちゃんとそれを意識しているんだと思いました。存在しない生命体、初めて目にする存在にあれだけのインパクトを与えたのは、そういう既成の昆虫の特性や特徴を上手に使い、人間の生理に訴えたからだと僕は解釈している。2作目の監督、キャメロンや3作目の(デヴィッド・)フィンチャーも1作目をベースに自分なりのエイリアン像を作っていますよね。キャメロンはクイーンエイリアンを登場させてハチっぽさやアリっぽさを出していたし、フィンチャーはエイリアンに寄生されたイヌ(完全版ではウシ)、そして4作目の(ジャン=ピエール・)ジュネは柔らかくて泳げるエイリアン。泳ぐ姿はちょっとワニっぽかった。映画としてのおもしろさに、そういう恐怖をプラスするのはすごいなあと思いましたね」

シリーズごとに特色があるのも「エイリアン」の魅力(写真は左から順に1~4作目)
シリーズごとに特色があるのも「エイリアン」の魅力(写真は左から順に1~4作目)[c]EVERETT/AFLO
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